過去ログ - まどか「もう大丈夫だよっ」まどか「あなたは……!」
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625: ◆D4iYS1MqzQ[sagesaga]
2015/01/31(土) 17:25:03.62 ID:BMlpNU4ho

マミは答えなかった。しかし言い逃れることは出来なかった。
さっき、まどかが病室を訪れたとき、マミのソウルジェムは濁りきる寸前だったのだ。
グリーフシードはちゃんと持っていたのに、マミはそれを使おうとしなかった。
もしまどかが来なかったら、マミは魔女になっていただろう。

まどかはマミを睨んだ。マミは視線を逸らした。しかしその表情には後悔の色があった。
まどかはふっと力を抜いて、穏やかな声で言った。「わたしにはマミさんの気持ちが分かるよ」

まどか「マミさんは魔女を倒さなくちゃいけないって……分かってるんです」
まどか「魔法少女だから。それが義務だから。……でも、自分では殺せない」

後ろで組んだ手が、言葉に迷うたびに指を組み替えていた。
まどかは慎重に言葉を選んでいた。口を閉じて、じっと考え込み、また口を開く。

まどか「……魔女を倒すのが……魔法少女の……正義で……」
まどか「マミさんは……魔法少女に、正義であって……ほしかった」
まどか「自分が魔女になって……他の魔法少女に倒されることで……魔法少女は正義になる……」
まどか「そして、マミさんの理想を……引き継いでほしかったんだよ」

言葉が、心に色を付けていく。水にインクを落とすように。
まどかが口を閉じると、マミは我慢できなくなったように言った。

マミ「そんなの身勝手よ……」
マミ「そんな理由で魔女になるなんて、今までに魔女になった子たちへの侮辱だわ」

今までとは違う、やけにクリアな声が通っていった。
音だけでなく、心の中まで研ぎ澄ませていくような。

まどかは、頬を緩めて緊張感もなく、にっこりとした笑顔になった。簡単にうなずいて、
「……そうですね」さらにその唇の動きのまま、

まどか「だからマミさん――――魔女にならないでください」

にっこりと笑って、まどかは言った。
マミは言葉を失った。まどかは前に出た。
はしっ、とマミの両手を挟み込む、指が絡み、ぎゅっとつかむ。
マミは息を飲んだ。その目の前いっぱいにまどかの満面の笑顔があった。

まどか「魔法少女が救い合う世界。すっごくいい考えだと思います……っ!」

まどか「でも今のままじゃ誰にも伝わりません」
まどか「マミさんが自分で示さなくちゃいけないの」
まどか「でないと、ソウルジェムの真実も、キュゥべえの正体も、いつかまた忘れられちゃう」
まどか「……マミさんを救えるのは、マミさんだけなんですよ!」

――だから、魔女になったらダメ。
まどかの言葉が、暗闇の中にいつまでも響いていくようだった。
しかし、声はもうそこまでだった。彼女は言い切って、口を閉じていた。

二人はいつの間にか、あの場所に立っていた。
天は真っ赤に染まり、地には地獄絵図が描かれて。視界の先にはそびえ立つ門。
二人とも、始めから気付いていた。何しろ今回は、結界の中に、雨は降っていなかったから。

マミ「でも鹿目さん、魔女を殺すのって、やっぱり可哀想じゃない?」

覚悟を決めたマミは、しかし最後に一度だけ、未練がましく言った。
まどかは間髪をいれずに答えた。「殺されないほうが可哀想じゃないですか……」
マミもうなずいた。「……そうね」 顔を上げるマミ。

――よし。

マミ「私、決めた」


 そのとき


 ぴし

という音が聞こえた。
聞こえた時には、すでに二人は分断されていた。
結界が大きく波打って、どことも知れぬ場所へと流されていった。


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