過去ログ - まどか「もう大丈夫だよっ」まどか「あなたは……!」
1- 20
659: ◆D4iYS1MqzQ[sagesaga]
2015/02/06(金) 18:06:02.54 ID:WJwczXL3o

〜魔まどか視点〜



何のために戦っているんだろう、とわたしは思った。
この世界に、わたしの守りたい人たちはいないのに。
この世界に、わたしの居場所は無くて、幸せは絶対に訪れないのに。
わたしは何を守るために、何をつかむために、戦っているのか、もう分からなかった。

影の魔女は、崖下から這いあがって、わたしの前に生きていた。
どうしてそこまで必死なの、とわたしは思った。あなたにはもう絶望しかないのに。
その触手を伸ばして、わたしを殺そうとする本気の一撃を放ってくる。わたしには分からない。
どうしてそうまでして生きているの。

わたしは着地して、弓に矢をつがえて放った。矢は魔女の手前の地面に突き立って、ひび割れを広げて行く。
さっきからずっとそこを狙って撃っているの。足場を崩して魔女を落とせば、わたしの勝ちだ。

と、魔女が動きを見せた。
空中に影が集まって、さっきの大きい拳を形作る。わたしは身構えた。時間を止める用意。
魔女は拳をまっすぐに振り下ろした。――自分の足元に向けて。
振動が全身を抜けて、頭が揺れた。足場が大きく崩れて、わたしの足が地面を離れる。
全てが崩れていく。わたしも、魔女も、奈落の底に落ちていく。

わたしの足首に魔女の触手が絡みついた。落ちて行く視界の中で、わたしは下に魔女を見た。
弓に矢をつがえて放つ。わたしの頭は空っぽだった。落ちて行く。矢は正確に魔女を射抜いた。

ドンッ

すごい音がして、魔女は真下に吹っ飛び、宙を舞う瓦礫のひとつに叩きつけられた。
わたしの足首をつかんでいた手が、引き千切られるように離れた。わたしは時間を止めた。
停止した時間の中で、わたしは宙にある瓦礫のひとつに着地。見上げた先に、瓦礫の階段が見えた。
宙を舞う瓦礫の一つ一つが、上に帰るための足場のように並んでいた。わたしは瓦礫を跳び移って上に戻ろうとした。
足を掛けようとした瓦礫が急に動き、バランスを崩しかける。時間が動き始めていた。それでもわたしは跳び上がる。
その足首を引く手があった。見下ろした先に伸びる触手が、わたしの足首をつかんでいる。なんて執念……。
わたしはまた時間を止める。魔女の時間も止まるけど、いま止めないと共倒れになっちゃう……っ!
背中に衝撃を受ける。わたしは静止した瓦礫のひとつの上に横たわっていた。わたしは気付いた。

何のために戦っているんだろう、なんて……そんなの分かりきったことじゃない。
いま時間を止めなければ、魔女は奈落の底に落ちていたんだから。わたしと一緒に。
でもそうしなかった。それは……、わたしが死にたくなかったから……。生きるため……、魔女と同じ……。

魔女の触手は、今もまだ執念深くわたしの足首を握っていた。わたしは瓦礫にしがみ付いて耐えた。矢を放つ余裕が無い。
わたしは死を覚悟した。次に時間停止が切れたら、もう這いあがるのは無理だ。

……でも、魔女は倒せる。わたしはそう思った。それこそが魔法少女として生きた意味なのかもしれない。
なんの救いにもなってない、ただの自己満足だけど。

ぐらりと瓦礫が傾いて、わたしはその上から滑り落ちた。時間が動き出していた。
最後の瞬間に、わたしの両手は自由になったけど、もう上は見ていなかった。
弓に矢をつがえる。狙いは真下に見える影の魔女。放った矢が魔女を貫き、足首から手が離れる。

死ね―――――ッ!!!


わたしの腰に何かが巻きついて、次の瞬間、わたしは宙づりに吊り下げられていた。
一気に引き上げられて、ぶれる視界、崖を飛び越えて、柔らかい衝撃とともに降りる。

ほむら「まどかっ!! 間に合って良かった!!」

わたしは目を白黒させる。視界いっぱいに現れたほむらちゃんが叫んでいた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
699Res/552.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice