過去ログ - 【モバマス】「橘ありすの電脳世界大戦」
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25:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/17(火) 18:52:01.23 ID:xpTdZLia0
 季節は巡って、校庭の桜は美しく色づいています。

 卒業式は厳かな雰囲気のまま、終わりました。

 泣いている子も多かったですけど、私は泣きませんでした。

 教室での最後のホームルームを経て、私は今、ウサギ小屋の前にいます。

 他の生徒たちは、ほとんどが、正門前で記念写真を撮ったり、話をしたりしています。

 その輪の中に加わるなんてこと、私には到底無理でしょう。

 そういう学校生活を送ってきたのですから、当たり前のことです。

「元気にしてましたか」

 私が声を掛けると、三匹のウサギたちは、慌しく寄ってきます。

「少し、待っていてください」

 私は、先生に借りた鍵を使い、小屋の扉を開けます。

 ウサギたちが逃げないよう、慎重に、自分の体を滑り込ませました。

「ようやく、こうして出会えましたね」

 少しためらいましたけど、私は小屋の床にぺたりと座り込みます。

 制服が汚れちゃいますけど、どうせこれが最後なんです、好きにさせてください。

「よしよし」

 一番近くにいた子を、抱っこしてみます。

 なかなかに重みがあって、何よりあったかいです。

「えへへ……」

 私は、三匹ともを、満足がいくまで、順番に抱っこしていきました。

「私は、今日で、この学校を卒業です。どうですか、寂しいですか」

 最後ぐらい、奇跡めいたことが起きないかって、期待しちゃいます。

 だけど、ウサギたちは、相変わらずの顔をしたままで。

「私、夢ができたんです」

 誇らしげに胸を張ります。

「多くの人々に夢を与える、やりがいのあるお仕事です」

 聞いているのか、いないのか。

 一応、こっちを向いてはいるウサギたちに、語りかけます。

「決して簡単な仕事ではないです。辛い目にも遭うでしょう。だけど、やるって決めました」

 だから、と、私は身を屈めて、ウサギたちと視線の高さを合わせます。

「いつか、私がトップアイドルになって会いに来るまでには、人の言葉を覚えてください」

 約束ですよ、と、ウサギたちの腕に、小指をちょんちょんと触れさせていき。

 私はひとり、微笑みます。

 もう、寂しくなんて、ありませんでした。


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