過去ログ - 妹神「人族を止めてくれ」 姉神「貴女が何とかしなさいな」
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2:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:46:49.11 ID:ocD7F65P0
 亜人がいつまでも魔法を研究する一方で、女神の最高傑作たる人族は、道具を造り、世界に技術≠ニいう概念を生み出しました。
 人々の努力は生活を豊かにし、個々の資質に依存していた魔法社会は、誰もが扱える技術社会へと変わり、世界は急速に発展していきました。



妹神「姉さん、話がある」
姉神「あら、ちょうど良い。どう、綺麗な紫色でしょう」


 石造りの宮殿の一室。金細工が施された扉を開け放った少女に、姉は紫の反物を広げて見せた。
 僅かしか採れなかった、その色は、今や人族が造った合成染料により、量産が可能だ。


姉神「工場を増設すれば、全ての民へ配給できる。これで世界はもっと豊かになるでしょう」
妹神「その工場建設を、止めて欲しい。既に二つの森が死んだ。人に比べて木々の成長も、河川の浄化も、もっと遅い。森を失えば大地は枯れ、河川を汚せば、命が死ぬ」


 告げた瞬間、姉の顔から笑顔が消えて、冷たい視線が少女を射貫く。


姉神「何も持たぬあの子らが、必死に成した物を、捨てろと?」
妹神「違う、見直せと、言っている。私も多くの調整を行ったが、限界だ。しかし私や、水族の長が掛け合っても、人族は無視を決め込み、もはや止められるのは、姉さんだけだ」


姉神「他の子は、魔法で工夫すれば良い。でも技術を取り上げられた人族は、生きられない。肉体も魔翌力にも恵まれた亜人達は、違うのです」


 少女は唇を噛みしめた。姉は、望外の成果を出した人族を、寵愛していた。
 魔翌力を持たぬ人族が、代わりに身につけた技術は賞賛に値する。だがそれも度が過ぎた。
 次に姉が浮かべた表情は、嘲笑と侮蔑。そして僅かな苛立ちだ。


姉神「そもそも、貴女の世界が不完全なのよ。もっと自浄作用を強めた環境を、用意できないの?」
妹神「やっている。だが急激な環境変化は、生態系を狂わして種を絶滅に追いやる。今のままでは間に合わない。お願いだ、ちょっと抑えるだけで良い」


姉神「それは、そこまで見据えられなかった貴女の責任。ほら、泣き言を言わずに、早く何とかしなさいな」


 さも当然、とふんぞりかえる姉に、少女は、何も言い返せなかった。いや、言い返さなかった。
 何も言わず、彼女の中で、何かが静かに切り替わる。もはや言うべきことは無い。踵を返した少女を、姉は一瞥すらしなかった。
 そして、少女は、言われた通りに、創造した。

 世界を蝕む害悪を灼き尽くす、新たな仕組みの存在を。


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