7:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/21(土) 01:58:52.21 ID:8ucU1b060
衆目に晒されつつ言い争う、母親とさっきまで優しかったお姉さんとお兄さんまたはおじさんの剣幕に怯えた少年が、声を放って泣き出したことによってこの騒動は終わりを告げた。
誰も何も得をしなかった。なんとも後味の悪い、情けない幕引きであった。
「なんかごめんな」
非常階段近くのベンチ、打ち萎れた様子の光にオレンジジュースを渡しつつ俺、努めて明るい調子で言ったつもりだったのだが、声はかすれて力なく、そんな自分に腹が立った。
「……アタシも、ごめん」
「謝るこたないよ。ありがとな」
「どうして?」
「だってさっきも助けてくれたじゃないか」
「……」
光は相当落ち込んでいるようで、ともすれば沈黙しがちだった。無理もない。おそらく十代になったばかりで、今まで善悪の二元論で物事を見てきた光にとっては、さっきの論争、双方が善となりうる状況の争いというものにはあまり縁がなかったのだろう。
「アタシ……ヒーローに憧れてたんだ。女子だけど」
「そっか」
「でもやっぱり……子供だったんだな」
「そりゃそうだろう。小っちゃいし」
「……うん、小っちゃいんだ、アタシ。もう中学生なのに」
「うそっ」
「……」
まずいことになった。
正直今の状況で言うのもなんだが、俺は光がせいぜい小学校中学年くらいだと思っていた。変な話、光はそれなりに胸はあるものの、それを損なってなお不足するほどに背が低かったからである。
逡巡したが光は俺の言葉に反論できないくらいに落ち込んでいるし、俺もこれ以上光を傷つけたくない。
尻の火が燃えて。
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