過去ログ - 艦これSS投稿スレ -SS速報VIP

過去ログ - 艦これSS投稿スレ

↓ 1- 覧 板 20

924:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/05/26(月) 00:29:35.76 ID:9PJyBxIE0
しかし、提督も加賀さんもそれを切り出してくる様子はない。
まさか何も負い目を感じていないとでもいうのだろうか…？

「提督、一つよろしいかしら？」

気付いた時には自ら口火を切っていた。
私のその言葉に提督は加賀さんと目線を合わせるが、すぐに向きなおり続けたまえとだけ短く返してくる。
その瞬間に執務室内の雰囲気が一気に重くなるのを私は確かに感じた。
やはり解っているのだ。二人とも、今から私が何を言おうかとしているかを…

「戦果は先ほどあげたとおりですわ。
しかし、今回の海戦で私を含め４名が負傷しております。
こと、鈴谷においては戦闘が続行不可能なほどに消耗しきっていたことを提督は存じ上げていたのですか？」

「熊野、いくら旗艦を任せられているからと言って提督にそのような「いや、いいんだ加賀」

秘書艦としての責務か、それとも私の知らない何かを知っているのか、その言葉に応えたのは加賀さんであったが、提督はそれを右手で制した。
そして、しっかりと私の方を見据えて２、３秒の間を取った後に確かにこう言ったのだ。

「………熊野率いる艦隊の負傷状況は、戦闘が終わる度に島風から連絡を受け把握していた。
進撃、撤退の命令を出さなかったのは単純に俺が悩んでいたからだ」

「悩んでいたですって！？
先ほども申し上げたとおり、鈴谷は戦闘などできないほどに負傷していたのですよ！
それを知っておきながら、悩むとはどういうお考えなのですか！」

提督の机を両手で叩き、怒りを露わにするように私は怒鳴った。

一番聞きたくなかった言葉かもしれない…
鈴谷を始めとして、みなここにいる者は提督を一人物として好いていたのだ。
もちろん、私だって…

日頃の私たちを労って、ちょっとした晩餐を開いてくれたことだってあった。
秘書艦である加賀さんですら休ませ、自分だけで作業をすべてやり、私たち全体に休暇をくれたことだってあった。
なにより、いつだって私たちに正面から向き合ってくれ、やさしく接してくれた提督が好きだったのにそんな非情な言葉は聞きたくなかったのだ…

「あぁ、俺は軍師としてはまだまだ経験が浅くてな…
あの海域を一刻も早く制圧したかったための判断ミスだ」

「それで…それでもし鈴谷が撃沈してしまったらどうするおつもりなのです！」

「その時は…俺が責任を持たなきゃならない。
だが、同時に熊野は今回俺の命令を待たずに撤退した。この意味が解るな？」

「それくらい百も承知ですわ」

そう、確実に私は何らかの罰を受ける。
それが提督本人からなのか、上層部からなのかは解らないが、罰を受けること自体は免れないだろう。

「ならば下がれ。
俺は軍規違反を犯したお前に構っていられるほど暇じゃないんだ」

「それとこれは別問題で「熊野、これ以上の提督への暴言は私が許さないわ」

加賀さんが私へ向け弓を定めながら静かに言う。
本気で攻撃する気がないのは解る。だが、それでも負傷している私へは充分なほどの破壊力を持った一撃を彼女は放てるのだ。手加減してでも…

それにここで騒ぎを起こせば、皆が集まってしまうだろう。
それだけは防ぎたかった。いくら今提督に激情していようとも、鎮守府内全体にまでそれを知れ渡されたり、言いふらす必要はないのだ。
むしろそれは、精神衛生的みても、軍としてみても芳しいことではない。
ならば、私の胸の中に収めていればいいだけのことだ。きっと、加賀さんはそこまで解っている…

「解りましたわ…
私も入渠してきます」

だから、私は大人しくこの場を引き下がる。

悔しいが、それが軍というものなのだ。
それが組織というものなのだ…
私も鈴谷も所詮は一介の軍人であり兵器でしかない。
一握りの選ばれた提督や、その上層部とは訳が違うということである…

<<前のレス[*]｜次のレス[#]>>

1002Res/529.08 KB

↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。

VIPサービス増築中！
携帯うpろだ|隙間うpろだ