過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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32:律「うぉっちめん!」 [saga sage]
2013/09/25(水) 14:53:49.83 ID:yFOnK56a0



律と憂の会談と、ほぼ同時刻。
コトブキ・エンターテインメント本社ビルの社長室では、真鍋和が革張りのソファに腰掛け、
紬と向かい合っていた。
テーブルの上にはコーヒー、イチゴのショートケーキ、モンブラン、それに署名捺印済みの
書類が数枚置かれている。

紬「うん、これで契約事項は全部ね。和ちゃん、これからコトブキの顧問弁護士として、
  どうかよろしくお願いします」

和「こちらこそ、よろしく。でも、今回の申し出は本当に嬉しかったわ。こう言っては何だけど、
  今は夫の選挙活動の準備で色々と入り用な時期だったから」

紬「今回の衆院選は大変そうだものね」

和「ええ。それに婿養子で私の両親とも同居してるから、普段から気を遣わせてばかりだし、
  こんな時こそ応援してあげなきゃ」

紬「もし、私に協力できる事があったら、何でも言ってね」

和「ムギにはお世話になってばかりね。本当にありがとう」

紬「ううん、お礼を言わなきゃいけないのは私の方よ。唯ちゃんの事ではそれこそお世話に
  なりっ放しだったから。路上ライブで書類送検された時も、前の事務所を移籍する時も、
  今の事務所で契約違反をしそうになった時も。何度もお骨折りしてもらって申し訳無いわ」

和「フフッ、いいのよ。幼稚園からの腐れ縁だから」

紬「本当は私も唯ちゃんの為に何かしてあげたかったんだけど。経営の忙しさで手が離せなく
  なっていて……」

和「大丈夫、きっと唯もわかっていた筈よ。誰よりも何よりも放課後ティータイムの事を、
  他のメンバー達の事を考えていたのは、あなただって。現役の頃も、引退してからも、
  ずっと……」

紬「もっと私に出来た事があったんじゃないかって、いつも考えてしまうの…… だって、
  こんなに早く、唯ちゃんとお別れするなんて思わないじゃない……」

和「……自分を責めるのは簡単よ。でも、それじゃ唯が浮かばれないわ。あの子の分も、
  私達は精一杯生きていかなきゃ。人生は続くんだから」

紬「そうね…… 人生はまだまだ続く……」

和「そういう事。じゃあ、私はそろそろ……」

書類を封筒に収め、それをバッグに入れると、和は立ち上がって一礼した。
紬も立ち上がると、内線電話に手を伸ばす。

紬「菫、私よ。真鍋先生をお送りするわ。あなたも来てちょうだい」

社長室長の斎藤菫を伴い、紬と和は揃って社長室を出た。
廊下では三人が通り過ぎる度に社員達が深々と最敬礼し、エレベーターでは乗っていた社員達が
一斉に降りて三人に箱を譲る。
そんな大手企業ではありがちな光景を繰り返しつつ、紬らはビルの正面玄関から外へ出てきた。

菫「真鍋先生、只今お送りの車が参りますので、少々お待ちくださいませ」

和「えっ? い、いいわよ。電車で帰るから」

紬「まあまあ、和ちゃんは忙しいんだから、是非送らせて。ね?」

和「そう? じゃあ、お言葉に甘えて……」

正面玄関前で談笑する紬と和。
そこから十数m先に、一人の男が歩いていた。
チェック柄のシャツがパンツインされたケミカルウォッシュ・ジーンズ。脂光りしただらしの
無いヘアスタイル。無精髭。
オフィス街には全く似つかわしくない風貌の男。
彼は視線の先に紬を捉えると、急に歩く速度を速めた。
両者の距離が縮まるにつれ、急ぎ足から早足、早足から小走り、小走りから遂には疾走と
言っても良い程のスピードへと加速されていく。
そのうち男は懐から刃渡りの長い包丁を取り出し、紬めがけて殺到した。
周囲のざわめきと悲鳴、大きな足音。
異変に最も早く気がついたのは和だった。
眼を向けると、不潔そうな男が紬に包丁を突き立てようと迫ってくるのが見えた。

和「ムギ! 危ない!」


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