57:律「うぉっちめん!」[saga sage]
2013/09/25(水) 16:23:57.92 ID:yFOnK56a0
律「これで私の聞きたい事を喋りたくなった筈だ。それとも――」
律は男の上着の内側から、無造作に拳銃を抜き取った。
銃口が男の額に押しつけられ、撃鉄が起こされる。
律「――拳銃の手品が見たいか?」
ヤクザ「わかった! 教える! 教えるよ!」
律「言え」
銃口を向けたまま、律は男から手を離し、僅かに距離を開けた。
梓は再び律の背中に隠れ、彼女のトレンチコートの端をギュッと握る。
ノロノロと体を起こした男は激痛に身を捩じらせながら話し始めた。
ヤクザ「琴吹紬の殺しを依頼してきたのは企業舎弟のシャイニングプロダクションだ!
適当なのを見繕って、キモいオタクに仕上げて、琴吹を襲ってくれって!」
律「シャイニング? あの評判の悪い芸能事務所か。で、どんな奴だよ。依頼してきたのは」
ヤクザ「し、知らねえ! やり取りは全部メールだし、報酬も振込だ! 何にもわからねえんだ!」
律「知らない、か。襲ったチンピラが消されたのは知ってるか?」
ヤクザ「あ、ああ…… けど、あいつだけじゃねえ。ウチの組のもんが次々と消されてる。
オヤジは女の家のガス爆発で死んだ……! アニキも地下鉄のホームから落ちて
死んだ! 他にも…… 次は、次は俺かもしれねえんだ!」
律「ああ、そうだろうな。だが、人はいずれ死ぬ。私の友達も、私も、お前も。そして、
あの世なんてものは、天国や地獄なんてものは無い。死ねば意識は永遠に閉ざされ、
完全な無になるだけだ。そう考えれば、少しは楽になるだろ」
ヤクザ「ちっ、ちくしょう……! そんなワケあるかよ……」
右眼からは涙を流し、左眼からは血を流し、男はガックリとうな垂れた。
レンコン状の弾倉から弾丸がパラパラと抜かれ、銃は男の足元へ放り投げられたが、彼は拾おうともしない。
意気消沈する男を尻目に、律はいまだ震える梓を促し、事務所を後にした。
律「邪魔したな。殺される前に病院に行っとけよ」
車中では妙に気まずい沈黙の時が流れていた。
五藤組事務所のある雑居ビルから走り去って数分が経っていたが、梓が一向に口を開こうとしない。
梓と行動を共にするようになってからは何かと気を遣うせいか、どうにも律はやりづらい。
何かフォローを、と横目で梓を観察しながら渋々切り出した。
律「……やり過ぎって思うかもしれないけどさ。あれが一番手っ取り早かったんだよ」
梓「……え? あ、ああ、ごめんなさい。それはもう大丈夫です。少し考え事をしてただけ
なんです」
律「何を考えてたんだ?」
梓「ムギ先輩に協力を頼めないかな、って」
律「ムギに?」
梓「ええ。理由はいくつかあるんですけど…… まず、シャイニングプロダクションについて、
同じ芸能事務所の経営者であるムギ先輩なら色々と詳しいかと思うんです」
律「なるほどな」
梓「それと、警察が当てにならない上に、相手は暴力団と繋がりを持つどころか、暴力団を
簡単に使い捨てに出来る程の大きな力を持っています。それなら……」
躊躇うように言葉を切る梓の後を律が引き受ける。
律「負けないくらい大きな力を持っている琴吹グループの庇護があれば、そいつらと戦うのも
楽になる、か? あまり好きな考え方じゃないな。私は」
梓「でも……!」
律「まあ、待てよ。反対だとは言ってないだろ? いずれにしても、ムギの暗殺未遂と唯や
鈴木の殺しを繋げる線はこの一本しか残ってないんだ。それを繋ぎ止めておけるのなら、
ムギに協力してもらうのもアリだろ」
梓「じゃあ……?」
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