72:律「うぉっちめん!」[saga sage]
2013/09/25(水) 16:56:30.38 ID:yFOnK56a0
少しの沈黙を挟み、再び紬が話し出した。
紬「……最初は、琴吹グループ内の使途不明金の発覚だったの。すぐに内部調査を命じた結果、
業務上横領に手を染めていた三人の古参役員を洗い出したわ」カタカタ
紬は片手でキーボードを叩き、ディスプレイを少しの間見つめた後、すぐに三人へ視線を戻した。
紬「三人の役員を更に調査していく中で、彼らがある違法カジノの常連客だったという事実も
判明した。五藤組が中心になって、東京グラスタワー最上階のペントハウスで開いていた、
違法カジノよ」
澪「グラスタワーのペントハウス……?」ピクッ
紬「そこに、唯ちゃんがいた……」
梓「えっ!?」
澪「唯が!? どうして!?」
律「……」
何の脈絡も無く飛び出した唯の名に、梓と澪は色を失った。
しかし、律だけは何の反応も見せず、紬を睨み続けている。
紬「私も驚いたわ。だから、唯ちゃんへの個人的な調査を手配したの」
紬「当時の唯ちゃんには交際していた男がいたわ。名前は小椎尾学。聞いた事あるでしょ?
自分を大物ミュージシャンと勘違いした、下品で、頭の悪い、どうしようもない男……」
紬「バーでお酒を飲んでいるところに声を掛けられ、交際が始まったようね。あの頃の唯ちゃんは
心を病んで、お酒に溺れていたから、彼の口の上手さに騙されてしまったんでしょう……」
紬「すぐに唯ちゃんは小椎尾に連れられて、頻繁に違法カジノへ通うようになってしまった。
彼と五藤組の関係が深かった為にね」
梓「それを知って、ムギ先輩は何も行動を起こさなかったんですか……?」
紬「勿論、行動は起こしたわ。唯ちゃんと彼の関係が一切報道されないようにマスコミへ
手を回し、唯ちゃんを彼やカジノそのものから遠ざけるように五藤組に働きかけた」
澪「え……? いや、そうじゃないだろ……?」
紬「デリケートな問題なの、澪ちゃん。そのカジノの常連客は唯ちゃんや小椎尾、琴吹の役員
だけじゃない。あなたのプロデューサーさんや和ちゃんの旦那様もいたのよ」
澪「何だって!?」
梓「和先輩の旦那さん……!? あの、国会議員の……?」
紬「当時政権与党の議員や経団連の幹部が複数、東証一部上場企業数社の取締役達、大御所と
呼ばれる大物俳優やベテラン歌手…… 政財界や芸能界のバランスを崩しかねない黒い霧が、
あのカジノにはかかっていたわ」
澪「そんな……」
梓「一体、何がどうなって……」
予想など出来る筈も無い、飛び抜け過ぎた話の流れ。
驚きを通り越して、思考の麻痺を伴う混乱に陥っても不思議ではない。
紬「そして、この問題に取り組もうとしていた矢先に、もうひとつの問題が持ち上がったの。
それが――」
律「唯の自伝か」
ここまで無言を通していた律が不意に口を開いた。
話を横合いからひったくられたせいか、紬の表情が不機嫌そうに曇る。
紬「……その通りよ。唯ちゃんはカジノの件以来、尾行や盗聴を駆使して、あらゆる面で
私の監視下に置いていたわ。そんな彼女が一本の電話を掛けた」カタカタッ
短いキーボード操作の後、PCのスピーカーから律と梓には聞き覚えのある会話が再生された。
『――自伝、ですか……』
『うん、そうなの。だからね、純ちゃんにも協力してほしいの。音楽界の歴史とか、当時の
資料とか、そういうのをね』
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