15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:21:11.09 ID:hDad05Pp0
それからおれはもっと頻繁に村に行くようになった。
飼い狐といっても良かったかもしれない、あの頃のおれは。
どのみち同種の仲間がいるわけでもなかったおれにすれば悪くなかった。
もう村に放し飼いにされているトリを見ても素通りできるようになった。
少し前から人間のトリは食わないと決めていたが、そこは獣の性、
以前はどうしても視線をすぐには外せなかったのだが。
村には猫が何匹かいて、こいつらとは大変気が合った。
気が合うといっても慣れあったりはしない。
気まぐれに行動し、干渉せず、基本的には一匹でいることを好む、
その性質がお互い好ましかったということだ。
狼はぱったりと姿を見せなくなった。
ときおり響く遠吠えで生きていることはわかったが、森から出てくることは全くなくなった。
春が来て森に再び獲物が満ち、狩人の危険を冒してまで森から出る必要も、
俺を襲うこともなくなったのだろう。
平穏な日々が続き、狼の恐ろしさを忘れたおれは何と甘かったことか。
奴らは決して馬鹿ではなく、やられたまま諦めるようなタマでは無いというのに。
森から聞こえてきた遠吠えは、報復を企てるやつらの囁き。
やつらはそのチャンスを身を潜めてじっと待っていた。
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