835: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:50:23.46 ID:25c1NsJp0
《ならば少女の身代わりに私がなろうと考えた、だがそれも無理だった。何故ならメビウスはお前に飲まして以来私に決して血を譲ろうとしなかったのだ。そのため私が不老不死になりこの身を捧げることは適わなかった。》
《少女を奴らに引き渡さないためには不老不死になる方法を教えるしかない。しかしそれはメビウスの存在を奴らに漏らすことと同義だった。人間である少女ですら解剖にかけようとしている奴らに竜などという余りに魅力的な研究対象を知られてしまったらメビウスがどんな恐ろしい目に合うかは想像に難くなかった。》
《私はこれまでの人生の中でかつてないほど悩んだ、少女とメビウス両方を救うにはどうすればいいか。しかしそれらを考えるには余りに時間が短すぎた、なにしろ恫喝された次の日までに答えを出さなければ強制的に少女を連れて行くと言われていたのだ。冷静な判断を行う時間を奪われた私はいつしか愚かにも、"どちらも救うにはどうすればいいか?"ではなく"どちらを救うべきか?"という愚問に取り付かれてしまった。》
《そして私は少女を選んだ。いや、メビウスを切り捨てた。私達のために尽くしてくれた親愛なる友を私は裏切ったのだ。これが私の決して赦される事のない過去の罪だ。》
《それなのに彼は私を赦したのだ。一切の事情を話さぬまま、決して彼の存在を外部に漏らさないとかつて結んだ約束を裏切った私を見て、彼は自分の身より私達の心配をしていた。そして一切の抵抗をせず、心の底から嫌っていたであろう人間たちに連れられていった。彼ならばあの場で彼を取り囲んでいた人間を全て皆殺しにして逃げることも容易かったはずなのに私達が置かれた立場をあの場のごく僅かな間で察し、彼はお前の身代わりになることを選んだのだ。》
933Res/559.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。