過去ログ - 日向「強くてニューゲーム」
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938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/05(土) 11:27:03.00 ID:WBne/CcE0
つまり浩美は、自分のことよりも、電話を受ける相手――今で言うならば、川添聡(男子4番)や芝田美穂(女子6番)の身の安全を気にしている、ということだ。

「浩美さあ」
「なにー?」
「お前そうやって人のことばっか気にしてっからいじめられたんじゃねぇの?」
その瞬間、浩美の表情が固まった。
つい先刻まで様々な彩りを持っていた彼女の顔が、色彩を失う。
「…ごめっ、ごめんっ……」
知らなかった。 こっちから過去のことに触れるのは、タブーだったのか。
浩美が自分から話題に出してくるから気付かなかったが、確かに彼女が出す話題にいじめられた原因などなかった。
誰の手によって、どのように立ち直ったのかが、殆どだったではないか。

フリーズした浩美の右目から、涙が一筋こぼれ落ちた。
「あっ…あれぇー? なんで浩美泣いてんだろー…」
おい、自覚ないのかよ。
そう思いつつも、目を擦る浩美の頭を撫でる。
やはりあの数ヶ月は、彼女の中で大きな傷となっているのだろう。

今後は、こちらからは触れないようにしよう。


「うっす! あくっちゃんと浩美?」
浩美の頭の上に置いた右手の向こう、顔を上げるとこちらへ向かってくる男子生徒が見えた。
薄暗くなりつつあるがまだ分かる。あれは先程少し話題にも出た、石川佳之(男子2番)だ。
出発時間があまり離れていなかった故、そんなに行動範囲が離れていなかったのだろうか。
「石川…」
「え、あくっちゃん浩美泣かしてんすか。何してんすか。うわーやだわー!」
いつもと同じ調子で、佳之は啓太をからかう。
「ちがっ…これはだな、俺が泣かしたんじゃな…いや、俺が泣かしたんだけど……」
「うあーあくっちゃんいいから! 石川うざい!」
「えー俺がうざいってー? 傷つくわー」
浩美は啓太をかばい、そして佳之に向かって刃を出していないカッターを振り回す。

「はっはっ。まあ浩美が泣きやめばそれでいいさ」
「え、何そのキャラ。石川ってそんなんだったっけ? きもっ」
「浩美、お前石川には厳しいな…」
次から次へと浩美から罵詈雑言を受けるが、佳之はびくともせずににんまりと笑っている。そしてゆっくりと、口を開いた。

「な、お前らはさ、何色だった? あのくじ引き」
「ああ、あれか。俺が青で――」
「浩美は赤だよ!」
まとめて言おうとしたことを、途中から浩美に引き継がれた。
「そっ…か」
すると佳之は、こちらから目元が見えなくなるくらいまで俯く。
そして数秒後顔を上げると、少しだけ、笑った。


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