過去ログ - 日向「強くてニューゲーム」
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984:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:25:44.24 ID:e6Uk7Fse0
賢吾と季莉さえ撒くことができれば、運動能力の低い雪美と錬は問題ではない。
やればできるはずだ。

「逃がすか…ッ!!」

賢吾の低い唸り声が聞こえ、龍輝は振り返りざまに華那の手を引っ張って自分の後ろへ隠し、振り下ろされた刀の刃をデイパックで受け止めた。
剣道部で活躍する賢吾に刀を持たれるというのは恐怖でしかないが、反射神経なら龍輝は誰にも負けない自信があるし、真剣白刃取りはできなくとも大きな物でその刃を遮ることくらいなら難しいことではない。
賢吾の舌打ちが聞こえ(おーおー、真面目な榊原もそんなモンするんだな、初めて知った)、何度も刀を振り下ろすが、龍輝はそれを悉く受け止めてみせた。
それを離れた場所で見る雪美が「ふふっ、川原くんすごいすごい」とぱちぱちと拍手をしているのが非常に腹立たしいが、今は賢吾の相手をすることで手一杯だ。

「…龍くん、榊原くんを相手してて」

後ろで、華那が囁いた。

「雪ちゃんがリーダーなのは本当…なら、雪ちゃんを捕まえよう。
 …雪ちゃんを人質にして、交換条件で逃がしてもらうことができるかもしれない。
 かなが、雪ちゃんを押さえるよ」

「おい…華那…ッ!?」

落ち着いた口調で何を大胆なことを言っているんだ、華那は。
止める間もなく、華那は龍輝の陰から飛び出し、雪美の方へ向かった。
確かに、班員の命を握るリーダーを押さえれば、賢吾も季莉も手出しはできなくなるはずだし、華那の言うことは理に適っている、適っているのだけれど。

賢吾が華那の動きを見逃すはずがない。
龍輝は華那に言われた通りに賢吾の動きを止めようとしたのだが、賢吾は同じように刀を振り下ろすと見せかけてデイパックに当たる直前に刃を止め、龍輝の動きがびくりと止まった隙を見逃さず、刀を横に薙いだ。
龍輝は咄嗟に身体を後ろに逸らしたので刃は鼻先を掠めただけで済んだのだが、避けた勢いそのままに仰向けに倒れそうになった。
龍輝は持ち前の運動能力で何とか倒れずに踏み留まった――が、賢吾の次の動きへの反応が、少し遅れた。
龍輝が賢吾を押さえようとするよりも、間に合わないと判断して声を上げるよりも早く、賢吾の刀が、華那を背中から突いた。
華那の華奢な背中に刃がずぶずぶと入っていくのが見えた。
刃が抜かれると、華那は肩越しに自らを貫いた犯人の姿と刃をてらてらと濡らしていた紅い液体を限界まで見開いた小さな目に映し、そのまま地面に倒れ込んだ。

「華那…華那ああぁぁぁッ!!」

龍輝は華那に駆け寄ろうとしたが、賢吾がその行く手を阻んだ。
華那の血で汚れた刀の切っ先を龍輝に向け、龍輝を突き刺さんと突っ込んできた。
龍輝はデイパックをぶんっと振り回し、狙いを逸らさせた。
しかし賢吾は身体のバランスを僅かに崩したものの踏み止まり、再び龍輝を狙う。
振るわれた刀を、今度はデイパックで受け止め、押し合いが始まった。

「どけ、邪魔なんだよ榊原ッ!!
 華那、華那ぁッ!!!」

華那の返事はない。
そんな、まさか。
さっきまで後ろにいて、いつもと変わらないのんびりした口調で喋っていたのに。
小学生の頃からの縁もあって一緒に登下校することもしばしばあって、まあ時には周りから『付き合ってるの?』とか言われる位には仲が良くて(まあ、華那はそこそこ可愛いし頭も良いし、鈍くさいところだって可愛いと思うけど、思えばそういう空気になったことは一度もなかった)――そんな華那が、死ぬだなんて、まさか。



一方、真子と悠希は季莉から必死に逃げていた。
悠希1人なら季莉から逃げるのもそう難しいことではないだろうし、真子が普段の運動能力を発揮できればその可能性は決して低くはなかったはずだが(それでも季莉はクラス内では足が速い方で、真子は出席番号の関係で何度か季莉と並んで走ってタイムを計ったことがあるのだが、勝てたことは一度もなかった)、真子の足はガタガタと震えて言うことを聞かず、悠希の枷のような状況になっていた。

「…真子っ、雨宮ぁっ!!
 絶対、逃がすもんか、今度こそ…ッ!!」

“今度こそ”というのは、季莉たちが城ヶ崎麗(男子十番)らの班を逃がしたことを指しているのだと思うが、麗たちを逃がした腹いせに殺されるだなんて絶対にごめんだ。


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