999:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:47:49.10 ID:e6Uk7Fse0
晶はそれに気付いていたのだろうか。
いや、もしかしたら、晶も北斗のことを想っているのかもしれない。
教室で見せたあの怒りは、尋常ではなかった。
もしかしたら、2人は――
「相模さんは…瀬戸口くんと付き合ってたりとか、した?」
ふと疑問に思ったことが、そのまま口に出た。
聞いてどうなるものでもないのに。
北斗が自分のことを何とも思っていないであろうことには変わりないし、そもそも北斗はもうこの世にはいないのだから。
晶は「え?」と僅かに声を洩らした。
それは気付かれたということに対する声なのか、意外なことに対する声なのか、声色からは判断できなかった。
「あ…えっと…その…深い意味はなくて、何となく…っ」
晶のしばしの沈黙が怖くなり、千夏は必死に弁明した。
変に勘ぐられたりなどしていないだろうか。
変な印象を与えてしまってはいないだろうか。
「…ふーん……」
返ってきたのは、納得するような声。
それは、今までの会話の時と違い、少し楽しそうに聞こえた。
「天道さん…あなた、北斗のこと…」
「え、いや、えっと、あの…」
「大丈夫、あなたが思ってるような関係じゃない。
幼馴染、それだけ…」
それは、気を使って嘘をついているようには聞こえなかった。
北斗には気の毒な気もするが、恐らく晶にとっては事実なのだろう。
何も変わることなどないのに、少し安心してしまった。
「…北斗の、どこが良か…った?」
晶が珍しく自ら質問してきた。
僅かに詰まったのは、北斗のことを過去形で言ってしまったことに戸惑ったのかもしれない。
加賀光留(女子3番)らと別れて以降も会話が多いわけではないが、、晶の言葉のほとんどが単語から短文へ、そして長文へと変わってきたように思う。
心を開いてくれたのだろうか。
それならば、嬉しい。
「えっと…1番は…優しいところ、かなぁ。
やんちゃな感じだけど、親切なところもあるなぁって思って…
別に、あたしが直接親切にされたってわけじゃないんだけど…
あたし、男の子あまり得意じゃないから…」
「…そう」
千夏は晶を見た。
月光に照らされたその顔には、僅かに笑みが零れていた。
とても嬉しそうに見えた。
まるで、自分のことのように。
北斗の優しさは、主に晶に向けられていたように思う。
もちろん、接してくる人には誰にでも親切だったが、晶は別格だった。
その2人の姿は輝かしくもあり、羨ましくもあり、悔しくもあった。
もしかしたら、晶の優しさも、主に北斗に向けられていたのだろうか。
今の笑みは、千夏にそう思わせた。
「多分、あたし、相模さんと一緒にいる瀬戸口くんが1番好き。
相模さんが羨ましかったもん」
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