過去ログ - 双葉杏「プロデューサー……なんで……?」
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64: ◆BHsoERvI06Cm[saga]
2013/10/31(木) 21:35:07.38 ID:+5GEukR20

 連絡を終えて、病院に向かう。
 ……もしかして、うつ病とか診断されちゃうのだろうか。
 ま、とにかく行ってみてから考えよう。……なんとなくだが、ちゃらんぽらんな自分が戻ってきた気がした。

「しかし、杏があそこまで真剣に話を聞いてくれるとはね……」

 いきなり自分に乱暴を働こうとした相手に対して……アイツなりに自分を気遣ってくれたのか、それともあのとき感じたように、めんどくさいから自分がどうなろうと良いとでも思っていたのだろうか。

「はあ……ホント、他人のことなんてわからないことだらけだな……」

 初めての彼女に振られた時、兄貴が死んだ時……幾度も思い知った事。
 そんなとき、不意に兄貴が頭に浮かんだ。

 ……杏は、兄貴のことを『サボる方法を忘れてしまった』と評した。
 そのために、自分をコントロールする術を失ってしまったと。

 なんというか……それがしっくりきてしまった。正解かどうか、わからないのに。

「兄貴……さっきの俺みたいに、休める気持ちがなくなって、辛かったのか……?」

 答えは返ってくるわけない……のだが、なんとなくそれに応える兄貴が、頭に浮かんだ。

『さあね? 難しいもんだろ、宿題だよ』

 と、昔の優しい笑顔でも、夢で見た無表情に怒っている顔でもなく……どこか杏の印象に重なる、シニカルな笑みを湛えて、そう答える兄貴。
 初めて思い付く……見た覚えのない表情だったが……なんだか本当に、いつかどこかで兄貴にそんなことを言われたことがあった様な、不思議な感覚だった。

「……宿題、か。まあ……なんとか、やっていくさ。杏に、借りも出来たしな」

 診察時間までは少し余裕がある。病院までは、ゆっくり歩いていくとしよう。


                          ―終―




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