過去ログ - 一夏「祈るがいい」
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55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/10/29(火) 00:00:31.44 ID:vSPwT0kD0


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その日の夜。箒は布団に入り、一夏は昨日と同じように窓辺にいた。
部屋の照明を全て消したこの部屋は、月明かりだけが差し込み薄暗い。深夜十二時、ここIS学園の消灯時間も過ぎた今は聞こえてくる音や、それらしきものは全くといってもいい程ない。その中で一夏は何処かを、箒は窓辺に立つ一夏の背中をじっと見つめていた。沈黙、それだけが二人だけの空間に延々と続く。

『お前に、頼みがある』

ふと、箒の頭に昼食中に現れた一夏が言った、抑揚のない調子で言われたその言葉が蘇った。そのまま聞けば、ただの依頼にしか聞こえない。実際あの時も、単純に依頼だと思った。だが、今はそうでない。依頼というよりは一種の強制、抗う事が自分には許されていない命令。あるいは、自分を試す為の問い掛けのようにも感じられた。

『簡単な事だ。それでお前は手に入れる』

私は一体何を手に入れるんだろう。お前が記憶を失った理由か、何故そうなった訳か、自分の中の弱さを断つ力か。箒は、一夏の背中を見つめながらそう思った。
それを声に出して聞くことは出来なかった。それを聞いて答えてもらえる保証などない、かと言って答えないとは限らない。そんなことは分かり切ってはいたのだが、どうしてもそれが聞けなかった。そんなもどかしさに布団のシーツを握りしめて、そっと目を伏せた。


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