99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:22:28.44 ID:GkrSYZZD0
命令を受けたビット四機が、さっきとは全く別の多角的直線機動で目標へと動き出す。だが、それはすぐに終わった。瞬く間に一機、二機、とセシリアを離れたビットが、激しい一瞬の銃撃戦を繰り広げ、なす術なく破壊されていく。そして、ようやく側面にたどり着いた四機目のビットが一夏を撃った。だがそれは、回避動作により向けられた追加装甲によって逸らされ、同時にビットへ接近した一夏が握り潰した。
「ブルーティアーズが……!」
一夏は、バラバラになったビットを捨てた。それは、セシリアが意識を覚醒させようとした事が災いした。それにより生まれた隙が、唯一の好機であるリロードの一瞬を逃す結果となり、一夏の攻撃を許したのだ。
100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:25:53.01 ID:GkrSYZZD0
今のセシリアは、何かが違う、どうかしてしまったようだ、と自分でもそれがはっきりと分かった。自分の勝利を確信している中で戦い続けてきた彼女の、その一挙一動が、純粋に、目の前の相手を倒す事を目的としている。
不思議と胸が、強く高鳴っていた。それは、彼女が長い間忘れていた感覚だった。
もはや相手が男であろうが、女であろうが関係ない。自分はただ、この勝負に勝利(かち)たい。
それだけを、心から願う。
101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:28:14.97 ID:GkrSYZZD0
黒煙から、何かの塊がセシリアへと飛んできた。それを反射的にブレードで弾いて確認した時、それが一夏の持っていた拳銃のマガジンだとようやく分かった。その瞬間、黒煙から現れた一夏がセシリアへと銃を構えていた。
二人の発砲は同時だった。弾丸がセシリアのブレードを破壊し、ミサイルの下をギリギリで潜り抜けた一夏は眼前のミサイルビットの銃口に拳を喰らわせて破壊した。そして、こちらを向いた腰部のビットを蹴り飛ばし、セシリアの眼前に少なくとも五十口径はあるであろう銃口が突き付けられた。
その時、決着を告げるブザーがアリーナに鳴り響いた。
『制限時間終了、シールドエネルギー残量により』
102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:31:59.67 ID:GkrSYZZD0
一夏のが、千冬や真耶、箒の待つAピットへと戻ってきた。
展開されていたヴィンセントが、一瞬光った。そして、その光が一夏の掌の中に集まって小さくなり、ドックタグとなって姿を変えた。その小さくなったISを、一夏は見つめていた。
「まったく、色々とヒヤヒヤさせる。一応はまともな試合になっただけでも良かったが……あの時の二の舞だけはやめろよ」
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:33:47.63 ID:GkrSYZZD0
25
「はぁ……」
104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/11/10(日) 23:35:10.24 ID:CN2ELeogo
黒井ヴィンセントって訳ですね
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:36:37.21 ID:GkrSYZZD0
そこから、彼女の戦いが始まった。周りの大人達は狡猾にも、両親を亡くした哀しみに付け入るように、彼女の手元に残された莫大な遺産を狙った。哀れみをもって口先だけの言葉を並べ、擦り寄るように諂い、浅ましく卑怯な手を使ってきた。
彼女には、両親の死を嘆き、哀しむ暇などなかった。ただ、母の遺した遺産を、母が守ってきたオルコット家の名を守らねばならなかった。その為にあらゆる勉強をして、どんな事にも屈せずに戦ってきた。幾度となく人を欺き、時には血を見る事になった。
無情にも、一息つく間もない程に時間は過ぎていった。そして彼女は、自分の特殊な才能に気付いた。勉強の一環として受けたIS適性テストでA+が出た。その才能に着目した政府が、優秀な人材を自分達の国に捕まえておこうと様々な好条件を出してきた。政府からの援助があれば、まとわり付く金の亡者共から母の遺産を守れる、そう考えた彼女はそれを承諾した。そうして、第三世代装備ブルーティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼働データと戦闘経験値を得る為に日本にやってきた。
オズの魔法使いのカカシ。脳がないから自分で上手く踊れない。だから風に吹かれながら、揺られながらも必死に、単調な踊りを踊る。そして、上手く踊れるように脳が欲しいと嘆く。そんな愚かに見えるカカシが、まさに自分そのものだった。
今思えば、自分はオルコット家という広大な土地を守りながら、常に周りの大人達という風に哀れにも踊らされていただけで、自ら踊ろうとした事などなかったのではないかと思う。誰も彼もが自分を、セシリア・オルコットとして見ていた。それはオルコット家の後継ぎであるセシリアであって、ただのセシリアである彼女自身ではなかった。だが、あの男は違った。
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:38:53.75 ID:GkrSYZZD0
26
IS学園の地下五十メートル。そこは通常の手続きで入る事は出来ない。それどころか、レベル4以上のIDを持った一部の人間しかその存在を知る事はなかった。ここがIS操縦者育成機関である事が建前である以上、この隠された空間の存在は隠蔽されている。
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:41:53.99 ID:GkrSYZZD0
「現時点で分かった事はありますか?」
「はい、まずは………」
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/10(日) 23:45:43.34 ID:GkrSYZZD0
「すいません、山田先生。こんな夜遅くまで付き合わせて」
千冬は深く頭を下げた。
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