過去ログ - カカシ「春野サクラ……!」
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11: ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2013/10/14(月) 15:42:28.57 ID:BLnFpW2L0
俺がいくら二人のことを訴えても、警務部隊は俺を軽くあしらい、調査もそこそこに引き上げていった。がらんどうの家と、血溜まりだけを残して、俺の周りからはたちの悪い連中も父さんも姿を消した。

もう一人の少年は警務部隊の関係者だったのではないかと、勝手に憶測を巡らせたりもしたものだ。しかし、それは想像の域を出ることはなく、俺には春野という名字だけが刻まれた。

それをこれだけの年数が経ち、まさか自分の担当する下忍試験のリストで見ることになるとは、露ほども思わなかった。だが、俺の手の中にある簡素な文書には、確かに春野サクラと記されている。

尋常ではない気配を察知したのか、三代目は声をかけてくれた。柔らかい声に俺はふと我に帰る。

同時に俺の中で、どす黒い考えが沸き上がった。火影様は全てを知って、ほくそ笑んでいるのではないか。

「大丈夫か?今から一緒にナルトの家へ来てもらおうと思ったのじゃが……」

すぐに下らない考えを振り払い、俺は火影様と共にナルトの家へと向かった。想像以上に汚い部屋と卓上の腐った牛乳が、一人暮らしの侘しさを物語っている。

ナルトもまた孤独と戦ってきたのだと、物が散乱した部屋は、彼の波乱に満ちた人生を反映しているようだった。彼を下忍にしてやりたいなんて、試験官が思うべきではない感情が頭をよぎる。

しかし、そんな思いにさえふっと影が差す。ナルトを部下にするということは、春野サクラを部下にするということと同義だった。

ナルトの家を後にした俺は、遂に春野サクラについて一言も口に出さないまま、三人と顔を合わせることになる。

どんなことを思えばいいのか、正直分からなかった。もしかしたら、名字が同じなだけの赤の他人かもしれない。

もし、他人でなかったとしても、サクラには何の罪もないのである。当時産まれてすらいなかった彼女は、どうこじつけても復讐の対象にはならないはずだ。

……こんなに冷静に頭が回っていたのかと聞かれれば、全くの逆だと答えるしかない。次々と勝手に沸き上がる感情に苛まれながら、彼らの待つ教室の扉を開けた。頭上に仕掛けられた黒板消しにさえ、俺は気がつかなかった。

俺の頭で見事にバウンドした黒板消しを見て、大成功といった体でナルトが飛び跳ねる。サスケは不安そうに俺を見た。そして、春野サクラは全身で「私は止めたんです」とアピールしていた。もしかしたら実際にそう口に出していたのかもしれない。


それよりも俺は、特徴的な桃色の髪から目を離すことが出来なかった。


「お前らの第一印象は…嫌いだ」

やっと言葉を捻りだし、場所を移すことにした。解放感のある屋上なら、このはち切れそうな感情も少しは休まるような気がしたのだ。

実際は屋上へと辿り着く前に、俺は平静を装える所まで落ち着いていた。三人の簡単な自己紹介を聞き、それぞれの人物像は俺の中におぼろ気ながら出来上がった。

ナルトは、こんな里でどうやって真っ直ぐに育ったのか不思議だが、存在が眩しく思えるほど言葉が希望に満ち溢れていた。

サスケは、やはり復讐に取り憑かれていた。何とかしてやりたいが、復讐の無意味さを説けるほど俺は綺麗な人間なのだろうか。

サクラは、話を聞いた限り普通の女の子だった。サスケに恋心を寄せている、年頃の女の子。部下にならなければ、なんの接点もなかっただろう。つくづく自分の運命を呪うしかなかった。

しかし、彼らを下忍と認めたからには、上司として責任を持たなければならない。下忍試験の演習から数日後、俺達は初任務へと向かっていた。


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