2: ◆aTPuZgTcsQ
2013/10/14(月) 15:05:20.53 ID:BLnFpW2L0
とある日、いつもよりかなり早く、家のドアはあの待ち望んだ音をたてた。父さんと話している間だけは、やむことのない騒音を忘れることができる。任務明けにいつも待ち構えている俺は、父さんからしたら迷惑だったかもしれない。
それでも、父さんは嫌な顔一つせず俺の相手をしてくれた。世間がなんと言おうと、俺にとってはただ一人の味方であり最高の父親だった。
そして今日もまた、いつもと同じ笑った父さんの顔を見ることができるはずだった。
その日も俺は日中に活動することはなく、鍵が開く音がするまで眠っていた。まだ重く垂れ下がる瞼をこすり、ゆっくり布団から這い出たとき、俺の耳は異常事態を敏感に察知しとっさに屋根裏へと隠れた。
狭く埃っぽい屋根裏で音をたてないよう慎重に体をよじり、わざと開けられた板の隙間から自室を見下ろす。月明かりに照らされた見覚えの無い男が二人、金属製の棍棒を担いで中へと入ってくるのが見えた。
二人共、父さんがつけているベストと同じものを着ている。中忍以上であることは確実だった。
いくら気配を消しても、見つかるのは時間の問題だと身構えた時、片方の男が歩みを止める。
そして何を思ったのか、おもむろに棍棒を振り上げ家具に叩きつけた。木製のタンスは大きくひしゃげ、上に飾られていた写真立てのガラスと木片が散らばった。ゲラゲラと笑い声をあげる男は、土足のまま室内をうろつき、鈍器を振り回した。白色の枠に囲われた母の写真が、何気ない足の下敷きになる。
もう一人の男も何がおかしいのか、笑いながら扉や壁を蹴り飛ばし穴を開けていた。そのまま男は別の部屋へと移動し、様々な音をたてる。破壊音であることだけは間違いなかった。
その間も眼下では棍棒がところ構わず振るわれる。部屋の全ての物が、何かしらの損傷があることを確認し、目の前の男も別の部屋へと消えていった。家中からありとあらゆる破壊音と下卑な笑い声が響く。
余りの出来事に、俺は叫び声すらあげられなかった。次元の違う恐怖に手足は小刻みに震え、歯はガチガチと音を立てる。涙こそでなかったものの、数分も経たない内に強烈な睡魔に襲われ、地獄のような現状から逃げるようにして俺は深い眠りに落ちた。
そのお陰かどうかは知らないが、男達は最後まで俺を見つけ出すことはなかった。この日の事は今も鮮明に俺の頭に刻み込まれている。
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