26: ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2013/10/14(月) 20:50:44.74 ID:ZqZKzP3U0
しかし、命を絶たない限り、眠りは永遠ではない。
短い睡眠を何度も繰り返している内に、目覚ましが終わりの来ない日々の始まりを告げた。
朦朧とする意識の中、俺は寝台の上で身を起こす。
強い眠気は未だ猛威を奮い、鈍い頭痛も健在だ。
それでも昨日よりは冷静な自分が居た。
夢を見ることで頭の中を整理しているのだと聞いたことがある。
なら、今日の自分はどんな夢を見ていたのだろう。
何も思い出す事は出来なかったが、かえってその方がいいのかもしれない。
どうせろくな夢ではないのだ。
今日も、俺は下忍達と任務に向かわなければならない。
サクラにどんな顔をして会えばいいのだろう。
彼らにどんな言葉をかければいいのか、考えたくも無かった。
カーテンを締め切った薄暗い部屋に、秒針の音だけが響く。
ずっと前、リンが死んだときに購入した縄の存在がふと頭を掠める。
ただ、家には梁がない。
ドアノブなら、もっと細いものの方がいいだろう。
鉛のように重たい体をのそのと動かし、クローゼットに手をかけた。
ベルトを一本引っ張り出し、長さを調節する。
形見としてとってあっただけの、俺の趣味には合わない白いベルトは、長年の癖でまっすぐには伸びてくれなかった。
あの日と同じように、小鳥の鳴き声が聞こえた。
止めたはずの目覚ましが、再びけたたましい音をたてた。
昨日と今日の違いなど、この部屋には何もないように感じる。
しかし、たった数時間の出来事で俺は酷く疲れてしまっていた。
重だるい疲労感と鈍痛を伴う全身の浮腫が、俺の心の内を現しているかのようだった。
催眠術にかけられたかのようにフラフラと玄関を目指す俺の足を止めたのは、控えめなノックの音だった。
しばらく音の意味が理解できずその場に立ち尽くしていると、扉は再び音をたてた。
無視しても良かった筈なのに、判断力が鈍っていた俺は鍵へと手を伸ばす。
そして、扉を開けてしまった事に深く後悔した。
玄関先に立っていたのは、サクラだった。
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