過去ログ - カカシ「春野サクラ……!」
1- 20
30: ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2013/10/14(月) 21:08:37.96 ID:ZqZKzP3U0
意識を取り戻した時、俺は壁に背を預け天井を見上げていた。

何気なく床についた右手が水っぽい音をたてたのに驚き、目線を下へとずらす。

サクラは俺のすぐ隣で絶命していた。

凄惨としか言い様のない死体は目を見開いたままだ。

考えるより先に体が反応し、口布をとった瞬間、吐瀉物が堰をきって流れ落ちた。

肩で息をしながらずりずりと後退し、俺はサクラの死体から距離をとった。

再び壁に体を預け自分の両手を確認すると、柔らかい薄桃色の物体や血液が、指先と手袋にこびりついていた。

赤黒い染みはベストにまで及び、誰が犯人なのかは一目瞭然だった。

どうしようもない絶望のどん底に突き落とされ、俺の目からは自然と涙が溢れる。

カーテンはいつの間にか夕映えに染まり、サクラに出したお茶はそのままだった。

しかし、壁や床は赤く染まり、窓際の写真も血にまみれている。

なぜ、眠くならないのだろう。

これほどの事が起きれば、気を失うような強い睡魔に襲われてもいいはずだ。

なのに一向に眠気は訪れず、俺は頭を抱えるしかなかった。

既に俺は寝ているのかもしれない。悪夢にうなされている俺を起こす人間はいないのだ。

きっと、もう少しすれば目覚ましの音が響いてくれる……。


そんな下らない事を考えていたとき、突如腹の底から込み上げる物に俺は困惑する。

明らかに異常な反応を押さえ込もうとしたが、口角が勝手に歪み、押さえきれない衝動が俺を揺さぶった。

くぐもった笑い声が指の隙間から漏れだしていく。

一体俺に何が起きているというのだろう。

なぜこんなに笑いたいのか、自分でも理解できず、言い知れぬ不安に押し潰されそうになる。

だが、俺にはもう抗う気力さえほとんど残されてはいなかった。

やがて悪魔の誘惑に乗るようにして、俺は口を塞いだ手を外した。

口が大きく開き、内臓が裏返って飛び出るんじゃないかと思うほど、俺は大声をあげて笑った。

笑っても笑っても笑い足りず、もっと笑い声をあげたくて仕方なかった。

呼吸困難に陥りそうになっても衝動は収まらない。

腹筋と頬の筋肉がひきつれ、悲鳴をあげた。

それでも俺は笑い転げていた。

なのに、頭だけは冴え渡っていた。

ずっと目を背け続けてきた真実を、冷静な自分は唐突に受け入れる。

なぜ親父に毎日任務があり、夜にしか帰ってこなかったのか。

俺も含めてやっぱりこの里にはクズしかいない。

今度こそ俺は心の底から腹を抱えて笑った。

高笑いというよりは馬鹿笑いと言った方が正しい。

その馬鹿笑いを聞きつけ、大家が扉を叩いた。

ふと我に帰り、と言いたいところだが、もう俺が我に帰る事はない。

不気味なほど俊敏に衝動は引っ込み、変化の術で身なりを整えた俺はいつもの調子でドアを開けた。

「いやー、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
35Res/45.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice