270:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/20(水) 07:12:40.30 ID:ouFSgEcY0
この人たちは、とても、危険だ。
鳴神もみじ(女子十二番)の頭の中では、警鐘が鳴り響いていた。
もみじは、同じ班の仲間である木戸健太(男子六番)、城ヶ崎麗(男子十番)、朝比奈紗羅(女子一番)と共に、別の班になってしまった真壁瑠衣斗(男子十六番)、上野原咲良(女子二番)、高須撫子(女子十番)を探していた。
探すと言っても当てはなかったので、高い場所に上がって見渡すことはできないかと考え、この島で最も高さのある建物である灯台を訪れた。
その中で交代で見張りをしながら夜を明かした。
そして明るくなった頃、東の方角、木々の茂ったその隙間に人影を発見し、もしかしたら瑠衣斗たちではないかと思い灯台を飛び出した。
しかし、もみじの眼前にあったのは、とんでもない光景だった。
一部、木々に隠れていたので全てを目撃したわけではないのだが、少なくとも明るい色の髪を巻きツインテールにしている見るからに派手な女の子――湯浅季莉(女子二十番)が、自身よりも小柄な、太い2本の三つ編みと眼鏡という出で立ちの見るからに地味な女の子――室町古都美(女子十八番)を捕まえ、首元に何かを突き付けている光景は、紛れもなく真実だった。
季莉と古都美は苛めっ子と苛められっ子の関係だが、いくら何でも度を超えていた。
古都美は必死に向かいにいる女子(ウェーブのかかった黒髪を一つに束ねた髪型から、それは古都美の友人である鷹城雪美(女子九番)であると判断できた)に何かを訴えていたようだったが、それも虚しく季莉に首元をかっ切られ、倒れた。
古都美は普段から雪美にべったりとくっついていた記憶がある。
古都美や雪美は、他にのんびりとした関西弁を話す荻野千世(女子三番)とほんわかとしたイメージのある佐伯華那(女子七番)という4人で行動を共にしていたが、その中で2つに別れなければならない時には、いつも古都美と雪美、千世と華那という組み合わせになっていたので、グループ内でも特に仲良くしていたのだろうと思っていた。
それなのに、そんな雪美が眼前にいたのに助けてもらえなかっただなんて。
例えば、もみじが同じような目に遭ったとして、幼馴染である健太や紗羅が助けてくれず見殺しにされたとしたら――想像するだけで足が震えた。
「…こ…ことちゃん……ッ」
震えで崩れ落ちそうになったもみじを、隣にいた健太が支えてくれた。
見上げると、いつだって真っ直ぐで何事にも熱く燃える健太の瞳は、眼前で起こった悲劇をしっかりと見据えており、その瞳は怒りに燃えていた。
健太を挟んだ反対側に立っていた紗羅の、目力のある大きな瞳も同様だった。
友達のことを大切に想い、曲がったことを嫌い、ストレートに感情を露わにする――昔からこの2人は似た者同士で、いつももみじを護ってくれていた。
一瞬でも、2人がもみじを見殺しにする未来を考えた自分が恥ずかしくなり、もみじはぽかりと自分の頭を軽く叩いた。
「何してんだもみじ」
もみじが叩いた場所を、麗の白い手が優しく撫でた。
見上げると、麗のいつもの自信に満ちた、それでいて優しい笑顔があった。
しかし、すぐに前方へと視線を向けた麗の横顔も、険しい表情となっていた。
「あれは…見逃せねーな」
もみじの頭から、麗の手が離れた。
麗が、季莉たちの方へと向かい、同調した紗羅がその後を追った。
「え……え、何で…逃げようよ……ッ」
もみじは動きかけた健太の腕にしがみ付き、訴えた。
やる気の人に近付いて良いことなんてないし、そもそも季莉や、今もみじたちに背中を向けている榊原賢吾(男子七番)は、一度もみじたちを襲ってきた。
そんな人たちに敢えて近付くだなんて恐ろしいこと、絶対にやめるべきだ。
「プログラムなんかに乗るヤツらが赦せないんだろ、麗は…俺もだけど。
大丈夫だって、今度もヤバけりゃ逃げればいい、足の速さじゃ俺らの方が上だし。
俺も、アイツらに一言言ってやらなきゃ気が済まないし」
「やだ…やだよ…健ちゃん待って、待って…!!」
健太に腕を振り解かれ、しばし立ち尽くしていたもみじだったが、皆から離れてしまうことも恐ろしかったため、自分の頭の中で鳴り響く警報を無視して季莉たちに近付くことになってしまった。
ようやく追いつくと、麗の左腕にしがみついた。
ちらりともみじを見下ろした麗は目を細めて笑みを浮かべた後、前に向き直った。
「随分と、酷い真似するじゃねーの」
麗の声に、こちらに顔を向けていた季莉は大きく目を見開き、古都美の血で汚れたままの鎌を構えた。
同時に、こちらに背を向けていた賢吾と松栄錬(男子九番)が同時に振り返り、錬は足を怪我しているらしく(ブラウンのチェック柄のズボンと、左足の膝から10cm程上に巻かれたバンダナの大部分が変色していた)、振り返ったと同時によろめいて木の幹に身体をぶつけていたが、賢吾は刀を鞘から抜き時代劇の侍のごとく構えた。
287Res/306.04 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。