過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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266: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2013/12/10(火) 22:00:41.12 ID:TcqASv/o0

白い生クリームに、ぽたりと透明な液体が落ちる。
フォークを握ったまま、トールは暫し制止した。

「あ……?」

ぽたぽたと溢れている。
どこからだろう。
考えてみれば、すぐにわかった。
自分の瞳から溢れた涙でしかなかった。

「あ、……」

目の前が滲んで、物が見えなくなる。
フォークを取り落とし、そのまま下を向く。
止まることを知らず、涙はテーブルを濡らした。

「――――ああ、俺、本当に、」

アイツのこと、好きだったんだ。

笑う顔が、泣いた顔が、驚いた顔が、拗ねた顔が。

ただ、目の前で、隣で、あるいは同じ部屋で。
ケーキを食べたり、構えとひっついてきたり。
冗談を言ってくる声も、繋いだ手も、好きだった。

こんなに長い間捜しているのは、彼女が恋しいからに他ならない。
下らない日々が、あまりにも心地良かった。
何を差し置いても守りたかったくらいに。

「初めて、守れるものが、出来たのにな」

気づくのが遅すぎた。
もっと早く、引き止めの言葉をかけるべきだったのだ。
あまりにも鈍感過ぎた。それが、結果として彼女を失う羽目に陥った。

たったの半年。
されど半年。

一緒に過ごしたその日々の、一日毎。
全てが楽しかった。知らないことを沢山知った。
無意識下、どこかで、そんな日々が永遠に続いていく気がしていた。

「ちくしょう、」

フォークを拾い上げ、ケーキを口に突っ込む。
やっぱり不味い。美味しくない。
だが、食べていると、彼女が食べている様子がまざまざと想い出される。

「あんな紙きれ一枚で、要らねえ札束で、諦めきれるかよ――――」



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