過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2013/12/17(火) 21:54:22.69 ID:JoSljzfA0
思えば、本当に右手を振るった事なんて、数度しかなかった気がした。
ほんの少し努力すれば、皆は自分に微笑みかけてくれた。
才能があるだけで。ただそれだけで、多くの人に望まれた。
自分が出来ることなんて、膨大な奇跡の一部を、ほんの少し人々に振舞っているだけなのに。
「ぐ……、」
「なあ、教皇さん」
ゆっくりと近づく。
自分の後ろに在る『第三の腕』を見て、彼は少し怯えた。
それは少し気分が良くて、とても、さみしい。
「確かにヴェント、テッラ、アックアの三名は希有な才能を持っていた。
しかし、俺様とは比べ物にならん。比較する方がかえって哀れだ。
『神の右席』なんてものは、俺様さえ生きていれば充分に機能する」
ゆらり、と右手を水平に掲げる。
まだ『第三の腕』は空中分解していない。
ローマ教皇の背中には、守るべき多くの市民、そしてその皆が住む大広場がある。
民衆を暴力から守ろうとするローマ教皇は、紛れもなく人格者だった。
人に選ばれたことなんて、気にする必要はない。
神様だって、あなたを選んだに違いない。
思いはしたが、言えなかった。
言わないままに、右腕を振るった。
意識を刈り取るための無慈悲な一撃が、優しい老男を貪った。
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