過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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359: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/01/04(土) 00:29:03.93 ID:mmZG/6ru0

「う、……ぇえ゛ッ…!」

のろのろと腕から手を離し、こみ上げるままに嘔吐した。
元々ロクに食べてはいなかったが、胃の内容物全てが胃液に混じって雪原へ吐き出される。
真っ白な雪が黄色に染まる様を眺め、苦い水に涙を浮かべながら、少年は嘔吐した。
喉が灼かれ、息が苦しい。死んでしまいそうな程苦しい。

「げほっ、かは、」

雪にみっともなく手をついて、吐き出す。
やがて治まる頃には、全ての気力が抜け落ちていた。

何だったんだ。

自分の努力は。
そもそも、希望を持ったことが間違いだったとでもいうのか。
ただ一度、もう一時だけ彼女と共に在りたかったというその願いは。
そんなにも悪いことだったのだろうか。

何も、胸を張れる人生だとは思っていない。

自分はどちらかといえば日陰者で、彼女もきっとそうだろう。
しかし、彼女とてそんなに悪いことをしたとは、トールには思えなかった。
たとえ扇動を命じたとしても、彼女は引き金を引いただけだ。

ここまで無慈悲な扱いを受けなければならない程、悪いことをしたとは思わない。

それは恋人の欲目だと批判されても、トールは構わなかった。

「………」

形見と呼ぶにはあまりにも残酷な腕一本を持ち。
彼はふらつきながら立ち上がると、やがて歩き出した。
大好きな少女の、片腕を抱きしめながら。





帰り道雪原を見やったが、指一本見つからなかった。


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