過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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932: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/05/02(金) 23:22:33.24 ID:Qx7dtyTN0

「思っていたよりも陳腐な作品だな」

つぶやきと同時に上映が終わり、場内は明るくなる。
周囲のカップルは女性側が泣き、男性側は優しい笑みを浮かべている。
彼らは連れ添って外へ出ていき、あっという間にフィアンマとトールは取り残された。
ゴミは清掃時に回収してくれるらしく、ドリンクホルダー等に置いておくだけで良い。
それにしても立つ気配がないな、と横を向いたところで。

彼女は、何の前触れもなくトールに抱きしめられた。

……良い匂いがする。

紛れもなく、自分の愛する人の匂いだ。

「……トール?」
「……フィアンマ、…愛してる」

『あの日』、最期に言ってあげられなかった言葉だ。
泣きながら約束するので、自分は精一杯だったから。
墓へいっても、花束を供え、謝罪をしてはすぐに殺しや騙しに戻っていた。
だから、彼女に愛を囁いてこなかった。ずっと、こうしたかった。
映画の中、何度も酷い目に遭わされる姫君が彼女の姿に重なった。

「何だ、映画に感化されたのか」

くすくすと笑って、彼女は抱きしめ返してくる。
その控えめな胸からは鼓動を感じるし、確かに呼吸していた。


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