過去ログ - 美希「報われた恋に手向けの花を」
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70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/06(水) 22:16:08.96 ID:XktwjYbi0
  二年前に、私は結婚しました。私の大好きな人、私のプロデューサーさんと。とっても幸せでした。今でもきっと、幸せだと思います。きっと。

「ごめんな…さい…ごめん…な、ひゃっ…あぅ…」
春香の唇から小さな血の塊がこぽっと流れ出した。殴られた時に口の中を切ってしまったようだ。
頬にはできたばかりの青いアザがくっきりと付いていた。
「うぅ…痛いよお…」
口を押えながら立ち上がろうとすると、足が上手く動かない。膝に力が入らないのだ。足は床に散らばった夕食のなれの果てをかきまわしただけだった。
床にうずくまったままもがいていると、スリッパが食器を踏み潰す音が近づいてきた。
ぱきん。ぱきん。
春香にはそれが、とても遠くで響いているように感じた。
「…っ!あぅうっ…!」
激しい痛みが春香を混濁した意識から連れ戻した。頭をねじ切られるような、ぎりぎりと締め付ける痛み。
肩まで伸びた栗色のロングヘアが、雑草でも引き抜くかのように力任せに引っ張りあげられていた。
「ぎぃっ…!いやぁああっ!痛いっ、痛いですっ!やめてえええっ!」
まともな髪を強引に引き抜かれる痛みは尋常ではなく、春香は口の傷のことなど忘れて叫んでいた。
「っ! 黙れよっ!!」
「あぐぅっ!?」
次の瞬間、視界が一瞬だけ真っ暗になり目を開いた時には視界はぐるりと一回転していた。
「けひっ…はぐっ、うっ…」
息が思うようにできない。脇腹を横から蹴り飛ばされたのだ。ようよう呼吸が戻ると、今度は息をする度に鈍痛が脇腹に走る。
「うぅっ…うっ…ふぐぅうっ…」
ボロボロと涙がこぼれてきた。痛い、痛い、痛い。ただ、痛いとしか考えられない。息をしているだけで痛い。
「いだい…いだいよお…うぇええっ…えぐぅっ…」
子供がケガをして泣き叫ぶのと同じように、19歳の春香はどうしようもなく泣き始めてしまった。
悲しみではなく、単純に痛みがもたらす生理的反応として。しかし、それは本来の役割とは裏腹に更に酷い暴力を彼女に向けさせるだけだった。
荒い呼吸が春香に近づく。デスクワークづくめで禄に運動もしない彼の体力でも、自分より明らかに体格の劣る彼女を痛めつけるのは容易かった。
――こんな、ガキっぽいリボンなんかまだ付けてやがる。髪なんて伸ばしやがって、それで大人にでもなったつもりか。
体格的な優位が、心の中で渦巻いていた嫉妬を歪んだ形へと昇華させていく。
――そうだ、春香は俺の妻なんだ。どんなにあいつらが持ち上げたって、今は俺が養ってる。だったら。
血走った眼は、春香の涙でぐちゃぐちゃになった顔ではなく破れかけたブラウスの胸元と、スカートからはみ出した脚を食い入るように睨んでいた。
春香をどうしたって、俺の自由じゃないか。
ベルトのバックルがごとりとやけに重い音を立てて床に落ちた。
思い知らせてやる。こいつが、誰のものなのか。
「あな、た…?やめ、やめて…おねがい…ひっ!」
春香の言葉よりも先に、重い身体が彼女の上に覆いかぶさっていた。
「やだっ、やだぁあっ!やめてくださっ…む、むううっ!?」
手がぎりぎりと万力のように春香の頬を締め付けている。酒臭い息が、否応なしに鼻をついた。
そして、怒張したそれを春香に強引にねじこんだ。悲鳴の振動が手を伝わった。

「くそっ!くそ、くそ!馬鹿にしやがって!」

「俺だって、俺だってなぁ!お前なんかよりずっと苦労して!」

「なのに、何でだよ!何で俺は…!」

既に春香はその言葉を聞いていなかった。彼女の意識は度重なる暴力から精神を守るため、意識の遮断を選択していた。

―――

 いつからこうなったのかは、よくわかりません。千早ちゃんは私に会う度に早く離婚しなさいと言います。一緒に暮らそうとも言ってくれます。でも、プロデューサーさんは私を殴った後はいつも
謝ってくれます。そんな時は、あの頃に戻ったんじゃないかって…。また、優しいプロデューサーさんに戻ってくれる気がするんです。だから、私はきっと幸せです。
いつか、いつかきっと戻ってくれるって信じてますから。



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