41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/11/30(土) 23:02:20.81 ID:Iu3nA/UDO
〜 さかば 〜
騎士団長「…………」
雑踏から逃れるように大通りを離れ、あえて人の通りの少ない路地を選び、ほんの数分。
表の喧騒の届かない場末にひっそりと軒を連ねる、少し寂れた酒場。
私はここが好きだった。
ここでは私好みに静かな酒を呑め、さらに何よりも町の住民たちと対等な目線で付き合う事が出来る。
ごつごつとした石のような指の男、酒に頬を赤らめながらも妖艶な笑みだけはいつも絶やさない女、常に震えている小男、等々。
私は彼ら彼女らの生い立ちも、職も、名前すら知りはしない。
また逆に彼ら彼女らは同様に私の一切を知らないのだ。
しかし、それでいい。
笑って酒を酌み交わせるならば、そんな物はいらないのだ。
白々しいほどに透き通った酒は、心地よく魂を焼けつかせてくれる。
時折、濁り酒を呑みたくもなるが、それは高望みが過ぎるという物だ。
深入りすれば、私が私を、騎士団の長という事すら酔いに忘れてしまうかも知れないのだから。
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