44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/12/01(日) 09:53:45.12 ID:C79xWnUDO
剣呑な雰囲気が私の肌を粟立てる。
まるで自分の命を奪った怨敵に対するかのような、敵意と悪意を織り交ぜた鋭い眼光が私を貫く。
その眼差しが伴う重圧に、私はすぐさま理解した。
騎士団長「魔術師か」
相手は見るからに一欠片の知恵も持たないような異形だが、魔族に人間の価値観は通用しない。
魔族という種族と相対する際の常として『百では足りない、万の可能性を予測し、攻略せよ』とは私の師の言葉だったか。
騎士団長「……ふうぅ」
私は、オーガすら難なく切り伏せたことのある愛剣を大上段に構え、深く息を吐いた。
私は師と違い、万の可能性を模索するには不向きな気性であった。
ゆえにまた、新たに『ただ一つの答え』へと辿り着く事が出来た。
騎士団長「……っ!」
息を止め、跳躍。
大地を蹴り砕き、私の身体は一瞬のうちに異形へと肉薄する。
そして、私は異形に表情を変える暇すら与えないまま愛剣を異形の頭部目がけて渾身の力で振り下ろした。
愛剣は労せず異形の頭蓋を割り裂き、胴体を抜け、右大腿を斬り飛ばして空に至る。
だが、まだ終わりではない。
騎士団長「はあッ!」
私は身を翻し、夜会で舞踏を刻むようにその場で一回転。
今しがた異形の身体から抜け出た愛剣に勢いを乗せ、再度逆方向から異形へと横薙ぎの一閃を放つ。
赤い飛沫が盛大に上がった。
異形の体へと吸い込まれた愛剣は、骨格、臓腑、筋繊維、血管、異形の身体を構成する部品を粉々に砕きながら数十メートルと吹き飛ばす。
圧倒的暴力によって形を失った肉塊は空宙で二転三転し、あらぬ方向へと四肢をバタつかせながら路地裏の壁に激突。もうもうと血煙を散らしながら地面へと崩れ落ちた。
騎士団長「『一撃必殺』単純な答えだ。魔法も種族特性も、発動する前に潰せば意味を成さない」
先ほどの技は二撃目が本命の技だが、私の場合は初撃で全員絶命するため嘘ではない。
乱れた外套を整え、私は何ともなしに夜空を見上げる。
闇の中に煌めく星々が、酔いの醒めた私の瞳には少し眩しく見えた。
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