過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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2013/11/11(月) 21:26:24.26 ID:foU1KJOC0
 ひと息に間を詰めると、男のひ腹へ当て身を喰らわせていたのである。
「むうん……」
 がくりと倒れる男の腕からさっと少女を奪い取り、さるぐつわを解いてやった。
 すると少女は、母親にすがりつく子供そのままに赤城の胸へ顔を押しつけ、盛大に泣き出したのである。
「よし、よし……もう心配はいりませんからね」
 赤城は数分ばかり、少女の背中を撫で、あやしてやっていただろうか。
 やがて少女が落ち着くと地面へ降ろしてやり、
「ちょっと、待っててくださいね」
 そう言って倒れ伏すタクシーの運転手へ駆け寄ると、手早く気付けを施した。
「むう……あ、あんたは……?」
「ただの通りすがりですよ……何があったのですか?」
「わ、分からない。俺はその子の父親に、この辺りまで娘を届けるよう頼まれたんだ。そしたら、こんな目に……」
「そうなの……?」
「うん、おとーさんにのっていけって。ピクニック、だよ。おとーさんも、あとからすぐいくって」
 少女の様子を見るに、嘘ではなさそうだ。
「その父親の顔は分かりますか?」
「い、いや……帽子を深く被っていたから……」
「ふむ……」
 赤城は、しばし思案し、
「運転手さん、悪いのですが、これで戻った先にあるお店にこの子を届けてあげてください。赤城が頼んだと言えば、いいようにはからってもらえるはずです」
「ええ!? それじゃ、あなたがあの……」
 赤城からこころづけを握らされた運転手は、信じられないようなものを見る目で彼女を見た。
 ――トラック諸島に住んでいて、赤城の名前を知らぬ者はおそらくいないだろう。
 かつての大戦時、栄光の一航戦として活躍した航空母艦の戦力と魂を受け継いだこの艦娘は、このトラック諸島において日夜深海棲艦の脅威から人々を守り続けているのである。
「内緒ですよ? 今日はオフですので……」
 そう言いながらウィンクしてみせると、日系ミクロネシア人らしき運転手はそれだけで天にも昇らんという顔だ。
「それじゃ、お譲ちゃん。悪いけどもう一回このタクシーに乗ってもらっていい? 私もすぐに追いつきますから……」
 赤城と離れ離れになると見て、少しむずがっている少女をなだめながらもタクシーへ押し込んでやる。
「ほんとにほんと? おいてったりしない?」
「ええ、そんなことはしませんとも。そうだ、お名前はなんていうんですか?」
「えっとね、あたしは文月っていうんだよ」
「文月ちゃん、ね。私は赤城といいます。ついたら、お店のお婆ちゃんにジュースでも出してもらうといいですよ」
 最後に頭をひと撫でし、送り出してやった。
「さて……と……」
 赤城は倒れ伏す下手人たちの様子を見ながら、チュークドレスの胸元を探り出す。
 豊満な胸の谷間に隠されていたそれは、傍から見れば飛行機の……それも大戦時に活躍した複葉機の模型である。
 だが、細部の作りと質感は明らかに模型の範疇へ留まっていない。
 しかも、コクピットにあたる部分では指人形ほどの大きさをした妖精が、かしこまった様子で計器をいじり、発進の合図が整ったことを敬礼でもって赤城に伝えているのである。
 となると、これは玩具などではなく、空母に属する艦娘が操る艦載機型の艤装であるに違いない。
「頼みましたよ」


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