過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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2013/11/11(月) 21:33:14.22 ID:foU1KJOC0
「おい! 銃声がしたぞ!」
「高遠の身に何かあったんだ! お前たち、かまわねえから中に乗りこめ!」
 茶屋からほど近い林へと身を潜めていたピアイルック家当主マウは、連れてきていた屈強な男たちにそう命じた。
 男たちは雄たけびを上げながら、暗がりの中を突進していく。これだけの人数がいれば、誘拐時のようなへまはやらかすまい。
 かつての留学時、見知らぬ土地で一人困っていたところを助けてくれ、それ以来変わらぬ友情を育んでいる友のため、彼はどんなことでもやり遂げる覚悟であった。
 だが――、
「うわっ!」
「なんだこいつ!?」
「ぎゃっ!」
 暗闇の中から男たちの悲鳴が聞こえ、すぐにそれもしなくなった。
「おい! お前たち、どうした!?」
 マウは懐から拳銃を引き抜き、自らも暗闇の中へ駆け込んだ。すると、男たちが昏倒する中へ闇からにじみ出すようにして立つ女の姿が目に入った。
 加賀である。
 赤城のそれとよく似た艤装を身につけた彼女は、しかし弓型の艤装を用いることなく、素手のみで男たちを叩き伏せていたのだ。
 倒れた男たちは、これもまた自らの艤装を身につけた吹雪と青葉が細引き縄でふん縛っていた。ロープワークは、海に生きる者の基本だ。
 彼女たちの姿を見て、その正体をまごう者などいようものだろうか。まして、マウは日本への留学経験もあるのである。
 留学当時、新聞に載っていた写真は先々代加賀のものであったが、艤装の形は同じなのだ。
「か、艦娘か……」
 半ば恐慌状態に陥りながらも、マウは手にした拳銃の引き金を引く。致命傷にならぬよう、脛の辺りを狙ったのはせめてもの良心であったか。
 が、狙いあやまたず加賀の左脛に命中した銃弾は、見えない障壁に阻まれたかの如く弾かれ、むなしく地面を転がるばかりであった。
 これこそが、艦娘の艤装が宿す防護の力だ。深海棲艦との戦いにも耐え得る加護を、たかが拳銃弾如きが貫ける道理などないのである。
「……頭にきました」
 言葉と共に、加賀が蹴り上げた地面が轟音を上げ、凄まじい勢いで弾き飛ばされる。対戦車バズーカの直撃でも浴びせれば、これだけの破壊を生み出せるだろうか。
 艤装を装着した艦娘に宿るのは、防護の力だけではない。
 かつて大海原を駆け抜けた艦艇の機関出力と、同等の剛力がその体にみなぎるのである。
 加賀ほどの大型空母に搭載された機関を思えば、これでも蟻をつまむほどの力しか込められていないのだと知ることができた。
「……まだ、無駄な抵抗をするの?」
「は、はは……」
 加賀の問いかけに、マウは力なくへたれこみ、その手から滑り落ちた拳銃が、からりと乾いた音を立てた。



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