995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/12/01(日) 15:10:35.85 ID:KqxkD1Fgo
>>955
「これ以上隠れたままでいるのは無理か……、やむおえん」
鞘から剣を抜き放ち、独りそっと呟く。
月が切れ切れに照らす城内を、勇者が立ち塞がる魔物を切り倒しつつ駆けた。
魔物たちは数を頼みに取り囲み動きを封じようとするが、彼をただの一度も止めることができない。
「死んだ女魔術師のために」
敵の血肉に塗れ、息がぜいぜいと切れる。身体がひどく傷んでいた。
ふと、朦朧としてゆく視界に黒い影が映った。
「そこをどけ」
自分でも驚くほどにドスの利いた声。
しかし影はそれを特に意に介した様子はない。
「俺が分かるか? お前のよく知った裏切り者の黒騎士だ」
「一人でここまで来たのは褒めてやる。だがもう無駄だ、剣を捨てろ勇者」
次第に視界が定まってくる。
影が自分の見知った男だと、今確かに認めた。
勇者は無言で、斜に剣を構えをとる。
「あい、分かった」
相手が剣を抜くのが見えた。半歩足を進める間、黒い影がこちらにゆらりと動く。
剣を打ち下ろし、返す刀で下段から切り上げるが手ごたえはない。
「――っ!」
一手遅れたと思った。だが、見直してみれば黒騎士は、先ほどの場所から一歩も動いていない。
その時不意にドスンと後頭部に重い衝撃が走った。
「馬鹿な人」
視界が闇に閉ざされゆく間際、背後から囁かれた、大切だった女の声。
次第に体温を失い固くなる勇者の体。彼の体を、月明かりだけが優しく包んでいた。
こういうの書かないから不安だけど、短くしてみたら割と読みやすくなった気がするんだが気のせいか?
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