過去ログ - タイムスリップの夏
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:26:59.22 ID:J66bdH/E0
[禁則事項です]の右隣で偉そうに腕を組んでいたもう一人の友人(記録三十秒)が中川に言って聞かせるように嫌みったらしく、
「この前さあ、いたんだよね。罰ゲームすっぽかしたやつ。ほら、二組の山本知ってるだろ? あいつが先週ゲームに負けて、罰を受けるはずだったのにおれは知らねえとか言って帰りやがったんだ」
 そこで一拍置いて、再び勿体付けるような口調で、
「そんでそれから三日間、山本は学校休んだ。何があったのか、俺の口からはとてもじゃないけど言えねえな」



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:28:08.62 ID:J66bdH/E0
ごくり。中川は無意識に喉を鳴らした。[禁則事項です]の左隣で天然パーマの髪の毛を弄っていたもう一人の友人(記録三十二秒)が、口を開く。
「あれは、おそろしい出来事じゃった」
 山籠もり歴三十年の仙人のような口調で、ぽつりと言い放つ。中川の背中を得体のしれない汗が走った。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:28:55.52 ID:J66bdH/E0
もはやイジメだ。中川はそう思った。さっきまでの[禁則事項です]たちとは違う、もはやたちの悪い児童漫画なんかに出てくるガキ大将だ。おれのものは、こいつのものなのだ。
 だが、中川は落ち着きを取り戻し始めていた。[禁則事項です]との付き合いは、高校入学からではあったが、それなりに長かった。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:30:21.20 ID:J66bdH/E0
「そんなこと言って、お前らホントはからかってるだけだろ」
 [禁則事項です]は吹きだしたようにふひひと笑った。両脇の三十秒と三十二秒もつられたように笑う。
「ばれたか。でも、山本が罰ゲーム投げたのは本当だぜ? だから、体育の時間中にあいつの制服を隠してやった」
 三十秒が補足する。
「その後あいつは体操着で昼休みまで過ごしたらしいぜ。でも、次の日には元気で学校に来てたけどな」
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:37:31.97 ID:J66bdH/E0
ちゃんちゃん。[禁則事項です]がニヒルに笑う。その笑みに中川が安堵していると、
「でもよ。お前さ、ホントに坂上に告白してみろよ」
 またその話か。中川は高校一年の時の林間学校二日目の夜のテントで、[禁則事項です]にその話をしたことを心の底から後悔していた。それ以来というもの、何かにつけてはそれダシにからかわれているのである。



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:38:32.96 ID:J66bdH/E0
でもよ。お前さ、ホントに坂上に告白してみろよ」
 またその話か。中川は高校一年の時の林間学校二日目の夜のテントで、[禁則事項です]にその話をしたことを心の底から後悔していた。それ以来というもの、何かにつけてはそれダシにからかわれているのである。
「するにしても、罰ゲームで告白なんか嫌だよ」
 それは相手にとっても失礼だ。と、中川は思う。告白するならもっとこう順序を決めて、
「罰ゲームにでもしなきゃ、おまえ坂上に告白しないだろ。いつまでじっと眺めてるつもりだよ? おまえそれでもチンコついてんのか?」
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:40:13.53 ID:J66bdH/E0
一理ある。不覚にもそう感じてしまった中川は慌てて、
「だから、このままじゃ終わらせないって何度も言ってるだろ。ほっといてくれよ」
 そうなのだ。おれにはおれのやり方があるのだ。だが、赤子のように駄々をこねる中川に苛立たしさを感じたのか、[禁則事項です]の声にトゲが生える。
「駄目だ。今を逃したらおまえは絶対にこのまま終わる。わかったらとっとと屋上に行って来いよ。坂上もおれらが上手く呼んどくからさ」



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:41:57.30 ID:J66bdH/E0
我らは恋のキューピッド、と言わんばかりに三人は示し合わせたかのように動き始めた。まず三十二秒が中川の後ろに素早く回り込み両脇に腕を入れて力一杯落ち上げる。わずかに体の浮いた中川の足元をすかさず三十秒ががっちりと掴み、担架で人を運ぶようなフォーメーションが完成した。


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:43:23.11 ID:J66bdH/E0
「それではお一人様。屋上まで」
「あいあいさー」
 がんばってなー。悪そうな笑顔で手を振る[禁則事項です]が、運ばれていく中川の視界の奥へと消えて行った。



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:44:35.25 ID:J66bdH/E0
それからまだ十分と経っていない。昼休みにしては妙に静かな屋上で、中川は体を強張らせていた。思えば中川は[禁則事項です]たちにハメられたのだ。三十秒と三十二秒の妙に統率のとれたチームワークと屋上の鍵を開ける手際の良さを目の当たりにして、中川はようやく理解した。


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