過去ログ - タイムスリップの夏
1- 20
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:17:48.86 ID:J66bdH/E0
「おせーよ」
 狭いトイレに声が響く。[禁則事項です]だった。
「でも、これでお前罰ゲーム決定な」
 謎の悔しさと敗北感が体中に渦巻くなかで、中川はむんずとズボンのチャックを上げる。
「何すりゃいいんだよ」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:19:48.42 ID:J66bdH/E0
は? 一瞬時が止まった。中川はうろたえた。
 だがそれも無理はない話なのだ。それというのも、[禁則事項です]はよく中川や他の友人を誘ってはこの手の「罰アリ、反則アリ、何でもアリアリのルール無用」のしょうもない賭け事を仕掛けることが多いのだが、これまでにおいての大抵の罰ゲームは、やれジュースを人数分買ってこいだのやれ禿げた担任に「それはヅラですか?」と聞いてこいだの、思春期の男子特有の可愛げのあるものばかりだったのである。



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:22:05.64 ID:J66bdH/E0
それがどういう風の吹き回しか。急に「好きな女の子に告白してこい」である。普段の罰ゲームとのギャップに、中川が半ば思考停止に陥るのも理解できよう。
「待てよ。いきなりヘビーすぎんだろ」
 ようやく中川が異議を申し立てた。しかし、[禁則事項です]率いる三人の裁判官はすぐさま却下した。
「駄目だ。もう決定したことだからな。中川、今から告ってこいよ。そんで、砕けて来いよ」
 振られる前提で物言う[禁則事項です]に少し腹立たしさを覚えながら、それでも中川は反撃する。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:23:24.58 ID:J66bdH/E0
「いやいやいやいや。いくらなんでもそれは」
「ゴタゴタいうなよ。ほら、行った行った」
 三人に無理やりトイレの外まで引きずられ、勢いよく背中を押されながら、
「場所は、――そうだな、屋上がいい。鍵は開けといてやるから、そこに坂上連れて来い」



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/11/12(火) 18:25:30.85 ID:J66bdH/E0
本気かよ? とまだ冗談半分で話を聞く中川の顔を真っ直ぐに見据えて、[禁則事項です]は冷ややかに笑い、
「もしやらなかったら、その時はわかってるよな」
 わからなかった。不思議と(ゲームの内容自体が軽いものだったからだろうが)これまで罰ゲームをサボったヤツなど一人もいなかったのだから。だから、罰ゲームを受けなかった人間を中川は知らなかった。



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:26:59.22 ID:J66bdH/E0
[禁則事項です]の右隣で偉そうに腕を組んでいたもう一人の友人(記録三十秒)が中川に言って聞かせるように嫌みったらしく、
「この前さあ、いたんだよね。罰ゲームすっぽかしたやつ。ほら、二組の山本知ってるだろ? あいつが先週ゲームに負けて、罰を受けるはずだったのにおれは知らねえとか言って帰りやがったんだ」
 そこで一拍置いて、再び勿体付けるような口調で、
「そんでそれから三日間、山本は学校休んだ。何があったのか、俺の口からはとてもじゃないけど言えねえな」



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:28:08.62 ID:J66bdH/E0
ごくり。中川は無意識に喉を鳴らした。[禁則事項です]の左隣で天然パーマの髪の毛を弄っていたもう一人の友人(記録三十二秒)が、口を開く。
「あれは、おそろしい出来事じゃった」
 山籠もり歴三十年の仙人のような口調で、ぽつりと言い放つ。中川の背中を得体のしれない汗が走った。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:28:55.52 ID:J66bdH/E0
もはやイジメだ。中川はそう思った。さっきまでの[禁則事項です]たちとは違う、もはやたちの悪い児童漫画なんかに出てくるガキ大将だ。おれのものは、こいつのものなのだ。
 だが、中川は落ち着きを取り戻し始めていた。[禁則事項です]との付き合いは、高校入学からではあったが、それなりに長かった。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:30:21.20 ID:J66bdH/E0
「そんなこと言って、お前らホントはからかってるだけだろ」
 [禁則事項です]は吹きだしたようにふひひと笑った。両脇の三十秒と三十二秒もつられたように笑う。
「ばれたか。でも、山本が罰ゲーム投げたのは本当だぜ? だから、体育の時間中にあいつの制服を隠してやった」
 三十秒が補足する。
「その後あいつは体操着で昼休みまで過ごしたらしいぜ。でも、次の日には元気で学校に来てたけどな」
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/12(火) 18:37:31.97 ID:J66bdH/E0
ちゃんちゃん。[禁則事項です]がニヒルに笑う。その笑みに中川が安堵していると、
「でもよ。お前さ、ホントに坂上に告白してみろよ」
 またその話か。中川は高校一年の時の林間学校二日目の夜のテントで、[禁則事項です]にその話をしたことを心の底から後悔していた。それ以来というもの、何かにつけてはそれダシにからかわれているのである。



36Res/14.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice