過去ログ - ウサミ「狛枝くん、みなさんと仲良くしてくだちゃい」狛枝「えっ」 2周目
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988:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/27(水) 19:15:16.66 ID:yKB+E4So0
鷹城雪美(女子九番)の溜息混じりの言葉に、湯浅季莉(女子二十番)は両手で構えていた回転式拳銃S&W M36“チーフスペシャル”の銃口を下ろした。
逃げていく城ヶ崎麗(男子十番)ら5班の面々の追撃のために雪美から渡されたのだが、初めて拳銃を握った季莉が上手に使いこなせるわけもなく、弾切れを起こしたところで雪美に止められたのだ。
ただ、初めてにしては及第点に遠く及ばない、ということはなかったと思う。
明らかに、“あの人”には当たったように見えたので。

「追わなくて良いのか?」

榊原賢吾(男子七番)は、鳴神もみじ(女子十二番)に撃たれた右腕を押さえながら雪美を見上げた。

「どの口がそんなこと言っているの、賢吾。
 あんな羊みたいな無害そうな子に撃たれておいて」

そう言った雪美も、顔をしかめながら左頬に手を当てていた。
賢吾を皮肉った雪美自身、その“羊みたいな無害そうな子”であるもみじに顔面を殴られ、奥歯が1本折れてしまったのだから、不機嫌になるのも仕方がないことだ。

季莉はずるずると気に凭れかかったままへたり込んだまま動けずにいる松栄錬(男子九番)のもとへ駆け寄り、膝を付いた。
小刻みに震えている手を握ると、錬は顔を上げて泣き出しそうな表情を季莉へ向けた。

「な…鳴神さん……僕の撃った弾…避けた…」

「何わけのわかんないこと言ってんの、偶然に決まってるでしょ!」

しかし、もみじには季莉も驚かされた。
普段のもみじはいつでも寝惚けているかのようにぼーっとしていて、幼馴染である木戸健太(男子六番)や朝比奈紗羅(女子一番)といった強気な面々の後ろにくっついているだけの、特徴を上げるなら城ヶ崎グループ内ではトップクラスで麗を慕っていることくらいしか思い浮かばない人だった。
人を拳で殴ることも、人に怒鳴ることも、躊躇なくクラスメイト相手に銃の引き金を引くことも、普段の様子からはとても考えられなかった。
ただ、普段の様子を思い出すと、麗はもみじを大層気に入っているように見えた。
あの麗に大いに気に入られるだけの“何か”が、もみじにはあるのかもしれない。

「さあ、少しここを離れましょう。
 今は、あまり人には会いたくないもの」

雪美がパンパンと手を叩き、そう言った。
確かに、班の中で一番の戦闘能力を誇る賢吾が利き腕を怪我してしまった今、誰か――特にやる気になっている人に会うのは非常にまずい。
紗羅に放り投げられてしまった、賢吾の刀も拾いに行かなければならない。

季莉は錬を立ち上がらせて肩を貸し、雪美の方へと向かった。
プログラムが始まってから初めて見る、不機嫌さを露わにした雪美の表情に、少し恐怖を憶えた。

「雪ちゃん……歯、大丈夫…?」

何か声を掛けなければと思い訊いたのだが、季莉を睥睨した雪美の冷たい視線に、口を開いたことを後悔した。
怒りに触れたのではないかと思ったが、雪美の怒りは別の方向へと向いていた。

「…鳴神さんのこと、なめてたわ。
 あたし、あの子のことも嫌い、大嫌い。
 “麗さま、麗さま”って、馬鹿みたい、刷り込みされた小鴨じゃあるまいし」


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