過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
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947:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/26(火) 06:03:15.00 ID:BVhJwVsq0
濱中薫(女子14番)は溢れてくる涙を拭う事もせず、ただひたすら走り続けていた。
何処に行けばいいのかはわからない、しかしじっとしていられなかった。
幼馴染である姫川奈都希(女子15番)の亡骸が、どこかに転がっている。
それを放っておくことなどできない。
せめて、お別れを言いたい。
今までありがとう。
お疲れ様。
それから――
「ナッちゃぁん…っ 何処にいるの…?」

薫は泣きじゃくりながら、奈都希の名を呼び続けた。
決して返事が返ってくることはない、それはわかっている。
しかし、呼ばずにはいられなかった。
奈都希に言わなければならないことがたくさんあるので。

薫は小さな頃からずっと奈都希と一緒にいた。
何処に行くにも一緒で、薫はいつも奈都希に手を引っ張られ、色々な場所に遊びに行った。

薫が蝶を追いかけたせいで2人で変な場所に行ってしまい、迷って家に帰れなくなった事があった。
薫が悪ふざけをして、奈都希が川に落ちてしまった事もあった。
奈都希が気に入っていたぬいぐるみをなくしてしまい、奈都希を泣かせた事もあった。

いっぱいいっぱい、迷惑をかけてきた。

それでも、奈都希はずっと一緒にいてくれた。
「気にしないで」、「あたしは薫のそういうところも大好きだよ」、そう言ってくれた。本当に、ありがとう。いっぱい迷惑かけて、ごめんね。薫も、ナッちゃんが、大好きだよ。家族を抜けば、1番だよ。佑ちゃんよりも、ナッちゃんが好き。だから、今、とても会いたいよ――

「ナッちゃぁん…」
「誰だ!?」

不意に声が聞こえた。薫はビクッと体を震わせ、涙を拭い、目を凝らした。よくは見えなかったが、そのおおよその影と声から判断した。薫よりおよそ頭1つ分ほど高い身長、あまり高くない声。

「…委員、長?」
「…濱中さん…か」

声の主、このクラスを束ねてきた男子委員長である浅原誠(男子2番)の落ち着いた声が聞こえた。薫は誠が苦手だ。最初に“誠ちゃん”と呼んだ時、「馬鹿にしているのか」と怒られた。大人数で騒いでいても、「静かにしてくれないか」とやはり怒られた。丸縁の眼鏡の奥にある冷たい目が、特に苦手だ。誠が何かを手に持っているようだった。その構え方からして、長めの銃か何かだろうか。それを、薫に向けているのがわかった。

「か、薫…武器…持ってないよ…?荷物ごと全部置いてきちゃった…」

そうだ、あの時はナッちゃんの事で頭がいっぱいで、何も持ってこなかった…

「悪いけど、僕はそんな言葉は信じない」

誠は持っている物を薫からそらさない。
薫はごくりと唾を飲み込んだ。

「…委員長、薫ね、ナッちゃん…姫川さんを探してるの…」
「姫川さん? あの人、死んだんじゃないの?」

誠の言葉が1つ1つ薫に突き刺さる気がした。冷淡な厳しい口調も、薫が誠を苦手にしている理由の1つだ。

「そ、そうなんだけど…でも…」

銃らしき物を前にして、薫は震えが止まらなかった。それに気付いているのかはわからないが、誠は溜息を吐いた。

「まあいい、生憎僕は見ていないよ。じゃあ次は僕の番、荷物を置いてきたって、どこで?」

薫は悩んだ。言ってもいいのだろうか。

『皆さんを信じていたいんでしょう?
 だったら、その気持ちを貫き通しなさい』

プログラムが始まった直後、長門悟也(男子14番)に言われた言葉が蘇った。そうだ、何を疑ってるんだろう。大丈夫、言ったところで委員長は何もしない!

「…あのね、あっちのデパートなんだけど…藤馬ちゃ…稲田君と、斎藤君と、不破君がいて…」
「不破!?」

誠が勢いよく聞き返した。薫は思わずビクッと体を震わせ、何度か首を縦に振った。それを見た誠は、高笑いを響かせた。

「フフフ…アハハハハハッ!!そうか、そんな所に隠れていたのか、不破!!」
「い、委員長…ちーちゃんを…探してたの…?」

薫はおずおずと訊いた。震えが止まらなかった――嫌な予感がした。

「ああ、探していたさ!!絶対に見つけ出して、この手で、殺してやるためにな!!オレは、あいつが、憎くて憎くてたまらないんだ!!」

しまった…薫は後悔した。言ってはいけない事を言ってしまった。


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