過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
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966:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/26(火) 06:29:42.20 ID:BVhJwVsq0
「確か…左腕、だったな」

麗はカッターシャツの袖のボタンを外してブレザーの袖と一緒に押し上げ、テニス部とは思えない白い腕を露出させた。
シンプルだが高級感漂うシルバーの腕時計と内肘の丁度中間部分に、直径3cm程度の黒い印があり、よくよく見るとそれは王冠を模していることがわかった。

「…刺青? 王冠とか、お前の趣味っぽいじゃねーか」

「バーカ、刺青自体が趣味じゃねーよ。
 俺は馬鹿みたいな模様刻まなくても十分すぎる程にイケてるからな」

「言ってろ、アホ」

「…ってことは、麗さまが、もみじたちのリーダーなんだね?」

麗と健太の冗談のようなやりとり(いや、これは普段と変わらない冗談の応酬か。麗の大きすぎる発言に「アホ」と返す健太、あまりにも見慣れた光景だ)の間も、もみじはじっと麗の腕の印を凝視していたが、顔を上げてじっと麗の顔を見つめた。
いつもは眠たそうに目をとろんとさせていることの多いもみじだが、麗を見つめるその瞳はしっかりと開かれ、強い目力すら感じさせた。
それは、麗に対する厚く揺るがない信頼。
紗羅以上に、いや、誰よりももみじは麗を崇めている。
プログラムという状況下であってもそれは変わらないだろうし、仮にチームが別れていたとしてもその崇拝は揺るがなかったはずだ。

「やっぱり、麗さまがもみじたちのリーダー…うん、当たり前だよね!
 麗さまはいつだってもみじたちの前に立ってなきゃいけないもん。
 麗さまは、何があっても、どんな時でも、麗さまなんだもんね」

「ああその通りだ、よくわかってるじゃねーか、もみじ」

麗はもみじのふわふわの猫っ毛を撫でた。
その手を止めると、麗は身動ぎしてスポーツバッグの上に座り直すと、紗羅たちの顔を順に見ていきしっかりと視線を合わせ、一呼吸置いてから口を開いた。

「ルールによれば、俺はお前らの命も背負ってることになる。
 だから、最初に俺の意見を言っておく」

先程までとは違う真剣な表情に、紗羅はごくりと息を呑んだ。
麗の発言に横槍を入れることが多い健太も沈黙し、じっと麗を見ていた。

「ま、教室出る時にも言ったけどな。
 俺は、こんなモンには乗らない。
 俺は俺のやりたいようにやる」

「やりたい…ように?」

もみじが言葉を反芻し、じっと麗を見つめて返事を待つ。

「ああ、やりたいようにしてやるよ。
 チームが違うから敵だとか、そんなの馬鹿馬鹿しいったらないだろ。
 だから、咲良たちと合流する。
 咲良と奨と瑠衣斗と撫子は同じチームだと俺は見てる。
 こっちがこの4人だしな。
 ま、アイツらがチームだろうがバラバラだろうが、そんなことも関係ないけど。
 とにかく、アイツらが出てくるのをここで待ちたい。
 お前らは、どうだ?」

「そんなの、反対する理由ないじゃん、あたしは麗に賛成」

紗羅は即返事をした。
そう、それでこそ紗羅のヒーローだ。
麗はプライドが高くゴーイングマイウェイで自己中心的で傲慢で超俺様な性格で――麗と深く付き合っていない者ならそう思っているかもしれない。
それは間違ってはいないのだが、麗はそれだけの男ではない。
それだけの男なら、これ程までに惹かれはしない。
紗羅が麗に惹かれるのも、もみじが異常なまでに麗を崇拝するのも、健太が文句を言いながらもずっと麗と一緒にいるのも、全ては麗が仲間を大切にする人だと知っているからだ。
仲間を認め、信頼し、自分の誇りとする――麗はそういう人なのだ。

「俺も賛成。
 『今頃どうしてるだろう』ってやきもきするより、傍にいてくれた方が安心できる」

健太も同調した。
まあ健太のことだから、頭の中は彼女の上野原咲良(女子二番)のことで一杯で、とにかく咲良に会いたくて仕方がないのだろうけれど。

…それは、麗も同じ、か。

紗羅は麗にちらりと視線を向けた。
麗は、幼馴染の咲良に長い片想いをし、健太に取られてしまった。
取られた、という言い方は正確ではないが。
麗は咲良を想い、健太を認め、身を引いたのだ。
このことを知っているのは紗羅と高須撫子(女子十番)だけなので、麗が自分の気持ちを胸に秘め続けるのなら、墓の下までこの秘密は持って行くつもりだ。

「もみじも賛成、麗さまは正しいもん」

「…ありがとな。
 ま、無茶はするつもりはねえよ。
 お前ら巻き添えにするとかは、絶対にしない」


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