過去ログ - 葉隠「10割占い」霧切「後日談よ」
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946:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/29(金) 09:00:32.05 ID:jdPmmt0K0
「あ……あぁ……ああああああぁぁぁあッ!!」
錬は血塗れになった金槌を手離し、頭を抱えて叫んだ。
ついに、人を殺した。
泣きながら何度も命乞いをしてきた、小さな女の子を。
それも、他の2人よりも、残虐に、執拗に。
「錬ッ!!」
錬の耳に、愛しい女の子の声が飛び込んできた。
錬が顔を上げると同時に、季莉が飛び付いてきて、錬の華奢な身体ではその力を受け止めきれず、2人は地面に倒れた。
季莉は錬に縋り付き、その薄い胸板に顔を押し付け、泣いていた。
何を思い涙を流しているのかはわからないし、今は、考えたくなかった。
季莉がここにいて、生きている――それが一番だった。
涙で潤む視界に、雪美の顔が入り込んだ。
やはり、変わりない笑顔を浮かべて。
「やっぱり、あたしの信じたことは間違ってなかったわ。
季莉ちゃんと松栄くんのお互いを思い遣る気持ちは、本物ね。
ふふっ、あたしが季莉ちゃんや松栄くんを[ピーーー]はずがないじゃない、冗談よ?
怖がらせたらなら、ごめんなさいね…もうやらないわ。
どうかこれからもお互いを思い合って、一緒に、生き抜きましょう?
賢吾、ここを離れて、どこかで少し休みましょう…どこがいいかしら」
雪美は錬と季莉に背を向け、地図を広げた賢吾と打ち合わせをしていた。
「錬…あたし…やる……生き残ってやる…っ」
季莉は顔を上げ、錬をじっと見つめた。
その目にはまだ涙が浮かんでいたけれど、目力の強さはいつもの季莉そのものだ。
「もう、後には退けない…
あたし、やっぱり、死にたくないよ…
それに…錬がいなくなるかもって思ったら…怖かった…っ
だから…一緒に生きよう、錬…っ」
錬の口許が、自然と緩んだ。
殺人を犯した後だというのに、こんなの不謹慎すぎる――もしかしたら、真子を殴り続けている間に、頭の捩子が飛んでしまったのかもしれない。
それでも、嬉しかったのだ。
『錬がいなくなるかもって思ったら怖かった』という、季莉の言葉が。
錬は身体を起こし、季莉の頬に手を伸ばした。
涙を指の腹で拭い――苦笑した。
「季莉、付けまつ毛…あ、僕の服に付いてる…」
「わっ、やだもぉ……泣きすぎてあたし超ブサイクだ今…」
「…いいよ、何でも…季莉は季莉じゃないか。
僕も、季莉がいなくなるなんて、絶対に嫌だから…
頑張って、生き抜こう…僕も、頑張るよ…」
もう、手は汚したのだから、後には退けない。
前に進むしかない。
生き抜くためには、もう、[ピーーー]しかない。
雪美の言う“生きる覚悟”を、錬と季莉は固めた。
雪美がちらりとこちらを見た。
錬や季莉にすら銃を向けるようなリーダー(本人は冗談だというけれど、冗談で済まされることではないだろう)から逃れる方法は、ないわけではない。
けれど、きっと、雪美の下から逃れることはないだろう。
「さあ、2人共立って。
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