過去ログ - 葉隠「10割占い」霧切「後日談よ」
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992:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/29(金) 10:00:28.20 ID:jdPmmt0K0
あと40分ほどで禁止エリアとなるE=02エリアは、住宅地の一部と岩場があるが、半分は海となっている。
海上に逃げれば、逃亡とみなされて殺されてしまうらしいので、当然誰もいない。
よって、このエリアの半分には禁止エリアなど意味がない事になる。
しかし、陸側には人がいた。
民家から200メートルほど離れた岩場の傍に、2人の少年少女が座っていた。
禁止エリアに指定されているにも拘らず、そんな事は気にしていないかのように、慌てる様子も動く様子もない。
ただ、寄り添って海を見ている。
「お魚…いるかなぁ?」
場違いな発言をしたのは、少女。
透き通るような白い肌に、生まれつきの茶色い髪。
優しい瞳に表れているように、とてもおっとりとした可愛らしい少女――淀野亜美加(女子21番)は、青い海を見つめながら訊いた。
「そりゃいるでしょ、海だし」
同じように海を見つめている少年は、二松千彰(男子15番)。
決して美形というわけではないどこにでもいそうな顔立ちだが、小さめの瞳は千彰の優しさを表しているようだ。
2人は陸上部の選手とマネージャーであり、同時に恋人同士でもある。
3年5組名物のほのぼのカップルだ。
プログラムというこの状況でさえ、いつもと変わらない様子である。
2人のデイパックは、少し離れた場所にまとめて置いてある。
千彰に支給された2連発デリンジャーは、千彰の手元に置かれているが、あくまで護身用であり、誰かを傷つけるための物ではない。
亜美加の支給武器は10メートルほどの長さのロープだったので、それは手をつけずにデイパックに入れたままだ。
「人…死んじゃったね…」
亜美加が表情を曇らせた。
千彰は無言で頷いた。
「千彰くんは…瀬戸口くんと…仲良かった…よね…」
千彰は再び頷き、俯いた。
瀬戸口北斗(男子6番)の悲惨な最期が目に焼きついている。
全身に銃弾を浴び、倒れたクラスメイトの姿は、一生忘れられないだろう。
もっとも、その一生は、もうすぐ終わってしまうだろうけれど。
「北斗は…良いヤツだったよ…
小学生の頃から…やんちゃで…楽しいヤツだった…
あんなに怒ったの、初めて見たよ…」
どうして殺されなければならなかったのだろう。
北斗の言った事は、千彰から――いや、クラスメイトたちから見れば正論だった。
「…亜美加も、津和野とか松田とか仲良かったよね…」
「うん…」
亜美加は何かを言おうとしたが、ぶるっと体を震わせ、言葉をつぐんだ。
校舎を出てすぐの場所で物言わぬ人形と化した、頭部の損傷が激しく、一瞬では津和野早苗(女子9番)とはわからなかったあの姿を思い出したのだろう。
松田由梨(女子18番)については見ていないのでわからないが、死んでしまったことに変わりはない。
これ以上思い出させるべきではないので、千彰は何も訊かなかった。
2人の出会いは、部活動だった。
幼馴染の沼井千尋(女子14番)と共に、陸上部に入った。
足の速さには自信があったので、誘われなくても入っていたと思うが。
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