過去ログ - 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 三隻目
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[sage saga]
2013/11/22(金) 02:33:46.69 ID:umsHAw1bo
「ありがとうございます、提督──」
その笑顔も、もうほとんど見えやしない。ハッキリと見える部分は、もう……無い。
だが、私の愛した少女が心の底から喜んでくれているのだけは分かった。
そして──
──さよなら。
その言葉を最後に、腕の重みが無くなった。
手を握っても、腕を動かしても、何も抵抗が無い。
「……金剛」
…………………………………………。
愛した少女は、何も答えない。答える事すらも、出来ない。
「────っ!!」
胸が痛む。
耐えれない程、痛い。
その場で膝を突く。固く握った拳を振り上げ、そのままコンクリートの床を殴った。
殴った拳が痛い。だが、胸の痛みと比べるとなんでもない。
目の前が滲む。視界がぼやける。
守れなかった悔しさが、心を占めていた。
「……提督」
救護妖精が話し掛けてきた。
「金剛、助けてあげな」
ぼやけて良く分からないが、どうやら『金剛』の方へ指を差しているらしい。
フラフラと、その言葉に従って『金剛』の入っているカプセルの前に立った。
培養液は排出され、カプセルは既に開いている。中で倒れている『金剛』を、少しだけ見詰めた。
けれど、培養液を吐かす為にすぐ処置に入る。
吐かすのはもう慣れた。半ば作業的にその処置をし始めた──のだが。
「ァハッ! ケホッ──!!」
少し吐かせた所で、彼女は培養液を自ら吐き出した。
それに少しだけ驚いたが、すぐに背中を擦った。
「ぁ……う…………」
粗方吐き終わったのか、弱々しい呼吸と共に『金剛』は目を薄っすらと開いた。
金剛よりも長い髪を掻き分け、目に髪が入らないようにした。
まったく同じ顔で、まったく同じ色の髪で、まったく同じ灰色の瞳の少女が、私を捉える。
虚ろな目をしているのに、私をしっかりと捉えていた。
何かを伝えようとしているようにも見える。
なので、少しだけ耳を近付けてみた。
「…………………………て、いと……く…………」
その半開きの口から、信じられない言葉が出てきた。
「────金剛?」
少女の名で呼び掛ける。
けれど、さっきの一言で力尽きたか、少女は瞼を落とした。
細く、小さな呼吸で、彼女の身体は上下している。
「提督? どうしたのさ」
救護妖精が聞いてきたが、彼はそれに反応出来なかった。
「金剛……」
呼び掛けても、彼女は反応しない。
しかし、彼の中で一つの光が見え始めた。
──希望という名の、一筋の光が。
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