1: ◆gIYX1xRWqRqj[saga]
2013/11/22(金) 10:58:17.72 ID:/SL6zkYoo
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のSSです。
主人公である比企谷八幡がひたすら温泉街でのんべんだらりと過ごすだけの内容なので、シリアスどころかコメディもありません。
会話文も一切ない時の文のみの構成ですから、その点はどうぞご了承ください。
最後に、主人公比企谷八幡のキャラクタが完全に別人になっております。ご寛恕いただけますよう、よろしくお願い申し上げます
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 10:59:15.52 ID:/SL6zkYoo
カタンコトン、カタンコトン。
規則正しい電車の揺れに、ふと比企谷八幡は目を覚ました。
軽く伸びをする。固めの座席に慣らされた背骨が音をたて、微かな痛みが心地よさをもたらす。声を出さずにあくびをひとつかいて、スマートフォンで時間を確認する。午前9時34分。乗車してから2時間半といったところだ。
窓の外を見る。流れてゆく風景は一面が田園、いくつかの工場が遠くに並んでいる。空は雲ひとつない快晴で、夏の旅に最適の日和だといえる。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:00:44.86 ID:/SL6zkYoo
比企谷八幡は今年で19になる、大学1回生という身分の青年である。
学内にも学外にも友と呼べる者の少ないひとりぼっちな男で、高校時代に幾ばくか希望を持って培っていた関係も、最悪の形で終わってしまった過去がある。
高校3年の頃にかつての知人の姉に連れられて二人旅に出て以来、すっかり旅が趣味となり、最低限の講義出席数を稼いではこうして平日にも関わらず各地へ一人旅に出るようになった。
元々非常に頭が回り、楽をすることにかけては他の追随を許さぬほどに要領の良い男であるから、単位面には何一つの問題もない。
気楽気儘のひとり旅を満喫するに、誰よりも適正のある男だといえた。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:01:45.61 ID:/SL6zkYoo
そろそろ目的地だと、八幡は電車を降りる用意に取り掛かった。
とはいえ、荷物と呼べるものなどほとんどない。
スマートフォンにイヤフォン、財布には宿泊費、交通費を除いて数万ほどの金と身分証明書。
そして切符。肩に掛けている鞄にはペットボトル飲料くらいしか入っていない。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:02:44.70 ID:/SL6zkYoo
アナウンスが響く。もうすぐ目的地だ。
今回は街中の小さな旅館に宿をとってある。学生向けのプランを申し込んだため、格安な点が嬉しい。
その街は自然豊かで近くには温泉もあるというし、自然に囲まれて湯治と洒落込むのも大変良い。
電車の速度がゆっくりと落ちていく。じきに扉が開く。
一歩踏み出せば、そこが旅の始まりだ。今回の旅は1泊2日で、普段の旅に比べれば期間は短く、小旅行といって良い。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:04:35.07 ID:/SL6zkYoo
深呼吸をすると、自然の豊かさを感じさせる清冽な空気が肺に流れ込む。
永く電車に揺られた体にやさしく行きわたり、代わりに古い空気が大気へ放出される。
空気がおいしいとは、きっとこういうことをいうのだろう。
いささか古びた駅を出れば、予想以上に賑わいも豊かな街だと八幡には感じられた。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:05:58.06 ID:/SL6zkYoo
さてどうしたものかと考える。時間にして10時をすこし過ぎたところだ。
昼には早すぎる。朝は家で食べてきた。やはりここは素直にチェックインを行うべきか。
予約した旅館はたしか、駅から10分ほどの近場だったはずだ。
近くに設置してある地図を見る。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:06:55.32 ID:/SL6zkYoo
地図で旅館の場所を確認して、八幡はとりあえず歩き出した。
緩やかな坂を下って行けば、楚々と流れる小川を渡れるよう、等間隔で橋が架かっている。
川に沿った道にも土産物屋やら定食屋が並び、標識には川を沿って進めば温泉処があると書いてある。
橋の中央に立ち、スマートフォンの写真機能を立ち上げる。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/22(金) 11:07:35.00 ID:/SL6zkYoo
橋を渡り、さらに小路をいくらか歩いた末にたどり着いた旅館は木造作りで、写真で見るよりも立派に見えた。
その辺のことにはあまり期待していなかった八幡にしてみれば、棚から牡丹餅といったところである。
中に入ってみるとやはりというべきか、全体的に木造を前面に押し出した、いかにも和風という落ち着いた印象を受ける内観だった。
受付でチェックインを済ませ、部屋へと案内される。
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