76: ◆Q2Rh6LUPmsVj[saga]
2014/03/02(日) 22:11:56.43 ID:J+Hw8iuQ0
荒い息を吐いて涙をぽろぽろと溢すケンスケ。
地面に倒れたまま親友を見上げるトウジ。
自分の為に涙する友の姿を見て、トウジもまた知らず知らずの内に涙を流していた。
これほどまでに友達から心配された事があるだろうか。
これほどまでに友達から想われた事があるだろうか。
片手でぐいっとこぼれた涙を拭うと、トウジは決意したように声を絞り出した。
「ケンスケ……。ワシはお前が友達でホンマ良かったと思う。せやけどな……いや、だからこそや。ワシは女装をやめへん! ここでやめたらワシは男やない! ただのクズや!」
「……どういう事だよ、トウジ。言ってる事おかしいよ。変だよ!」
ケンスケはしゃがみこみ再度トウジの両肩を掴んで揺さぶった。
しかし、最早トウジの決意は揺るがなかった。
「わかっとる。わかっとるけど、もうええんや。ワシは今日から男の娘や。それでええんや。ワシを友達や思てるなら、もうこれ以上何も言わんといてくれんか、ケンスケ」
姿勢を正して、彼はその場で深々と頭を下げた。
「後生の頼みや。頼む!」
「……トウジ」
その姿を見て、ケンスケはそれっきり俯いたまま沈黙してしまった。
言葉が見つからなかった。
紡ぐ単語もなかった。
悲しかった。
トウジが何故こんなにも女装に拘るのかは、ケンスケにはまるでわからなかったが、最早彼を止めようがないという事だけはどうしようもなくよくわかってしまったのだ。
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