12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/25(月) 23:53:06.90 ID:2LUuHdJ70
「………寝心地は悪くないか?」
「………大丈夫です」
「………固くないか?」
「………ちょうどいいです」
「………そうか」
「………はい」
懐かしいぎこちなさを感じながら、アナスタシアと二人、並んで寝転んで、星空を見ていた。
彼女と二人、色んな所へ星を見に行ったが、何度見ても星空というものは飽きないもので、いつも心を魅了される。
「………いつも甘えてしまってすいません」
急に、アナスタシアがそんなことを言った。
「………気にするな、いつも頑張っているお前へのご褒美だ」
持って生まれたルックスや才能がありながらもアナスタシアはそれらをさらに磨き上げようと日々努力している。頑張り屋なのだ、このアイドルは。毎日汗まみれになりながらダンスも歌も芝居もしている。ファンには見せられない泥臭い努力を褒めてやるのもプロデューサーの仕事なのだと分かっていた。
だが、そんなこちらの言葉に、アナスタシアは淡い迷いを顔に出した。
「………私は、頑張れているのでしょうか」
デビューしてほぼ二か月。
彼女のアイドルとしての活動は、うまくやれているどころか、十二分すぎて困るほどだった。
だが、彼女がほしいのはそんな即物的な言葉ではないと思った。
だから、言った。
「………お前は、星だ」
「え?」
疑問符を浮かべるアナスタシアの横で、星空を指差す。
「あの空の星のように、ただそこにあって、ここにいるよと知らせるように光っているだけで、誰かの心を癒し、震わせる。
今のお前は、まさにそれと同じだ。
お前がステージに立つだけで、元気をもらう人がいる。楽しくなれる人がいる。
誰かのためになれているのなら、それはアイドルとして最善だ。文句など言いようもない。
だから………お前は十分に頑張れているよ」
「プロデューサー………」
「まあ、レッスンはちゃんとやってもらうがな」
照れ隠しに付け足した言葉に、彼女は笑みをこぼし、
「………………当然です」
「………………そうか」
沈黙が訪れる。
しかし、決して心地の悪いものではなかった。
「………………プロデューサー」
「なんだ?」
「………………ありがとうございます」
「………………………なに。星空にあてられただけだ」
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