過去ログ - ウサミ「狛枝くん、みなさんと仲良くしてくだちゃい」狛枝「えっ」 2周目-2
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2013/11/28(木) 00:55:00.73 ID:/9QyfSIt0
藍瀬輝々(男子1番)は学校を出てずっとまっすぐに走っていった。ディパックが多少重いことは困るが、特に大きな問題はなかった。地図を見るために一旦足を止めて座った。ディパックのチャック
を開けて上下に動かす。その中から地図を取り出すために手を伸ばした。紙らしいものに触れて、それを掴む。地図を広げると適当な線で描かれた青空町だった。全部とはいかないが、とりあえず自分が今ここにいるのは安全だと思う。ほっとして地図を自分の胸ポケットに入れた。それともう一つ、確認したいモノを探すためにディパックに再び手を伸ばした。数秒かかってやっと取り出す。縄だった。ということは、自分の武器はこれかとすぐに理解できた。まじまじと見つめて、ディパックに戻した。
まあ、悪くないといえば悪くない。
山梨という男が現れていきなり殺しあってもらいます、と言われた時には冷や汗が出た。大体そういうのは、中学三年生が対象であって、小学五年生の自分には全く関係ないことだと最近思いがちになってしまっていた。大分前にプログラム終了のニュースを見て感傷的になっていたぐらいだ。もしも、中学三年生になって、プログラムに選ばれたら、と考えたことも多少はあったのかもしれない。仲間とそういう話もしたこともそういえばあった。
まさか、低年齢児童プログラムが存在するなんて。
自分達が知らないところでそんな恐ろしいことを次々と決められているのかと考えると寒気がした。ディパックの紐を肩に担いで回れ道をした。青空町で最も大きい建物、青空学園をじっと見つめる。自分達が大好きだった、街で、殺し合いをするとは馬鹿げたものだ。しかし、ちょっとは救われた気がしたのかもしれない。知らないところで殺しあう、迷い、恐れるよりはマシなのだから。
それでも。
自分の命が狙われるかもしれないという恐怖は消えないけれど。
仲間のことを思い出す。いつも自分の隣で笑っていた仲間。今頃何をしているんだろう。川瀬和生(男子7番)はきっと泣きながら仲間という名の自分達を探しまわるだろう。その間、死ななければいいけれど、誰かが見つけてあげなきゃ、いけない。甘野大和(男子5番)のことだ。きっと、和生やクラスメイトを探して、自分はこのゲームに乗っていないって主張して相手にわからせるに違いない。人を[
ピーーー
]ことがどんなに悪いことで、どんなに重いことか、大和が一番わかっているはずだ。それに、いくら何でも遊びやゲームが好きな中居螢太(男子16番)が、このゲームに乗ることは百パーセントありえない。彼は正義感が溢れていて、困った人達がいたらすぐに助けてあげる行動は誰もが知っている。そ
の人が悪いことを出来るわけがない。人を[
ピーーー
]以前に、誰かを傷つけることなんてことは絶対。……けど、今頃家族のために、どこかに隠れて泣いているのだろう。木元拓(男子8番)と静木青(男子10番)が、もし組んで、このゲームを止める方法を考えてくれたらどんなにいいことか。青木はる(男子4番)は、まあ、スポーツのことしか頭にないだろうけど、一刻も早く見つけてあげなければ、禁止エリアにひっかかりそうだ。相野輝己(男子2番)も同じだ。確かにいつも笑いが絶えず、悪戯はするものの、邪気は感じず、乗らない側だと思うが、正直不安だった。これからどうなることやら。ふっと、二人のことが気にかかっていた。
まずは、月下香介(男子19番)。
元々香介は、人間不信で、最初は誰一人信じていなかった。だからこういう疑うことが当たり前のこのゲームに放り込まれたら、彼はどんな行動をするだろう。裏切るか、裏切られるか。それともどっちを選べば、傷つかずに済むのか考えているとしたら、間違いなくこの先厄介なことになりそうだ。
そして、葵輝丹(男子3番)。
輝丹と自分はよく似ている。目つき以外、どこも。こんなことはありえるのだろうか。外見ならまだし
も、中身も半分は似ている。向こうはそんなことは気にしていないらしいが、これは凄く不思議なことだった。けど、外見が似ている人はいくらでもいるはずだし、気にしない方がいいかと最近思うようになった。輝丹はよく空を見ている。これしか彼が取る行動はわからない。元々、輝丹が何を考えているのか、誰も知らないだろう。
とにかくこんなところで、一人考え込んでいたら誰かに見つかる。遠くにみえる学園から目を逸らして歩き続けた。今は隠れられるところへ行って、そこで色々考えなければ。幸い誰もこの近くを歩いていないようだから。
どこかでノイズの混ざった音が聞こえた。それがどんな音かわからず、一旦足を止めた。
『えーと、みなさん、突然のことでびっくりされたと思います。山梨です』
あの人が、どうやらマイクを使ってこの町に放送を流しているようだ。でも、ゲーム開始後に流さなくてもいいのに。しかし、山梨は別の目的を言い始めた。
『この放送を流したのは、死亡者、禁止エリアをお知らせするためのものではありません。結構慌しかったもんだから、あることをうっかり忘れてしまいましてね。みなさんが始める前に、一度流そうとした曲です。しっかり聴いて下さいね。では、かけます』
しばらくの静寂。すぐに音楽は鳴り始めた。きっと、これがさっき言っていた曲だろう。せっかくなので聴こうと思った。が、後悔は先立たずだ。その音楽は普通じゃなかった。それを歌っているらしい、人達の声も、歪んでいた。女の人なのか、男の人なのか、子どもなのか、赤ん坊なのか、老人なのか。
とにかく、悲鳴や狂った笑い声に近い絶叫と甲高い音楽が合わせられ、とんでもない出来になっている。ちょっとだけでも聴いていると、思わず耳を塞ぎたくなる。普通の状況で、普通の人なら、笑って済ませられるだろうけれど、今は無理だ。というより、これは普通の状況でも聴きたくない。頭が割れるように痛かった。一体、あの人は何を考えているんだ?吐き気と眩暈に襲われ、しゃがんだ。
やめてくれ。
頭が痛い!
できるだけ、耳を固く塞いだが、どうにもならなかった。指の隙間からあの恐ろしい曲が流れ込んでくる。思い切り首を横に振って、少しでも音を聞き取りにくくするために走った。足音を大きく立てて、ただひたすらに走る。それでもまだ、聞こえてくる。直接ではなく、頭の中で。
やめろ。
やめろ、やめろ、やめろ、やめろ!!
念じても、止まってくれない。足音が余計に不愉快に感じる。立ち止まって、足の力が抜けたように、しゃがみ、頭を抱えた。
そしたら、目の前が闇に包まれた。
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