11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/01(日) 19:38:44.57 ID:j4MC2eqco
視線の主と思われる少女は、私の返す視線を意に介さず駆けていく。
私たちよりも一回りどころか二回りも小さいその後姿が、何を考えているのかは分からない。
自分の足が止まっていることに気付いた上、後ろからこれでもかというほど聞き覚えのある声が聞こえてきたので、そこで思考は中断した。
「さやかちゃん、眠そうだね」
「んー、なんかねえ。よくわかんないんだけど、最近睡眠不足気味で」
「授業中寝てばっかいるから夜寝れねーんじゃねーの?」
「あんたと一緒にすんな!」
賑やかな声に急き立てられるように、私は歩幅を広めて前に進む。
何よりも耳を捉えて離してくれない声に後ろ髪を引かれるけれど。
それは押し[ピーーー]。
ぐしゃりべちゃりと、私にまた赤い実がぶつけられる。
誰にも見えないその赤が視界を埋めて鬱陶しい。
耳に下がる結晶を撫でて心の平穏を保ちながら、ゆっくりゆっくり流れる風に逆らって歩いていく。
涼しかったはずの春の空気は、いつの間にか蒸し暑く変わっていた。
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