15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/12/02(月) 23:29:07.27 ID:7uDsyhBso
「あずささん、聞いてもいいですか?」
「なぁに?」
「どうして私を好きなったんですか? あなたに自分の想いを暴力的にぶつけることしかしなかったこんな私を……」
声が震える。心が恐れを持っている。
あぁ、如月千早という人間はどこまで傲慢なのか。あなたを信頼していないと宣っておきながら、嫌われたらどうしようと本気で怯えているのだ。
「千早ちゃん、私のこと信じてくれないの?」
あずささんの声音に弱気が混じる。当然とも言えるその反応に私は出せる言葉もなく、俯いて下唇を噛んだ。
「ふふっ、ごめんなさい。千早ちゃんが可愛いから、ちょっといじわるしちゃった」
一転して明るい気配を含んだ声に顔を上げると、ぺろっと可愛らしく舌を出したあずささんがいた。
私は真面目に話していて、恐らくあずささんも真面目にそうしている。私が暗くなるのを見て、明るく振舞ってくれているのだと思う。みんな真面目だ。でも私は冗談だったのかと安堵をつく前に、普段見ることのないあずささんの子供な表情に胸の奥がきゅっと跳ねる音を聞いた。
「千早ちゃんは私のこと勘違いしてる」
一つ柔らかく笑んで話を始める。
「私は流されやすいし、優柔不断だってよく言われるわ。でも、いくら痛みに同情したからって、好きでない人に体を許すなんてことはしない」
「それって……」
「確かに悲しかった。千早ちゃん、私の気持ちなんか考えてくれないんだもの。だけど、嫌じゃなかった。」
「本当……ですか?」
なら、私は、私たちは始めから同じ道を見つけていたということになる。
なんとも随分と遠回りをしていたことだ。私が最初に道を間違えなければ、私が最初にほんの少しだけ傷つく勇気を持てていれば、こんなに長く一人ぼっちで歩かずにすんだのに。こんなに長く彼女を一人にさせずに済んだのに。
いまさらもう遅い悔いが上がってくる。
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