6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/02(月) 23:02:53.70 ID:7uDsyhBso
実らせないと決めた初恋は、それでもとても輝いていた。日々に灯る幸せは増え、あずささんと居る一秒一秒が特別な意味を持って私の記憶になっていった。
充分だと思っていた。日常に落ちている愛しさを抱きしめられているだけで。
そして、その愛しさが何時か懐かしさに変わる時を待つだけで。
私は分かっていなかったのだ。恋一つにさえ臆病になって何も出来ない、そんな弱い心の人間が、恋一つの重みに耐えられるワケも無いことを。
恋は確かにキラキラと輝いていた。喜びはあちこちにあって、ふとしたことに嬉しさを感じた。
でもそれ以上に、恋は鬱々と暗くて、降り掛かる苦しみは重く、ふとしたことに心は妬けて痛んだ。
この恋は楽しいことばかりではない。
愛しさがいくら募ろうと相手へそれを送る手段はなく、自分1人で慰めては余計に惨めになる。そんな夜を何度も過ごした。
あずささんが撫でてくれることに幸せを感じた次には、その行為に友情以上の情が宿ることは無いのだと影で泣いた。
男性の人があずささんを厭らしく、なめ回すように見ることに怒りが全身を貫きかけること。あずささんが男性と笑顔で談笑している様子に身を焼かれそうになること。
一度や二度では済まないだろう。
結婚の相談も信頼されていると思えば嬉しかったが、笑顔と誠意の裏でどれほど耳を塞いでしまいたいと思ったことか!
彼女の口から「早く結婚したいのだけれど、どうしたら良いのかしら?」なんて言葉が出るのだ。こんな苦痛なことはない。
「千早ちゃんは誰か良い人知ってる? 千早ちゃんが紹介してくれる人なら、安心して会える気がするの」
そう言われた日は、無神経なことを言うあずささんへの怒りと、安心される誰かに対する黒い嫉妬のままに「私じゃダメですかっ!!」と叫びそうになった。
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