25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/05(木) 00:12:03.42 ID:My2ZDWWTo
ともすれば、今二人でこうして歩くことに意義はもうなく、残ったのはただの空いた時間である。
ふと手元に意識を向ければ、購入したドリンクの中身が底をつきそうであった。
さて、では何をしようかと思った時、俺はふと口に出して言う。
「早いけど、誕生日おめでとう」
「えっ…あ、ありがとうございます」
翠の誕生日は間違いなく明日だが、あえて今言っておくことにした。
「はは、やっぱり早いか」
彼女の困って笑う姿におどける。
明日は恐らく親の出番ではない。
あの場所に、翠の仲間がいるのなら、その時のあの場所はすべからく彼女たちの舞台である。
ならば、俺がでしゃばれるのは降って湧いた今しかない、ということだ。
「いえ、こちらこそわざわざありがとうございます」
翠は軽く会釈をして礼を言った。
アイドル一つとっても、反応の仕方は千差万別だ。
にやりと笑う子も居れば恥ずかしがる子も居る。あるいは何でもないように礼を言う人もいる。
だから翠のこの態度も、彼女なりの素直な反応なのだろう。
「……せっかく出かけたのに、用がなくなってしまったな」
今日のこの時間のことを知らなかったので、渡す予定のプレゼントは家に置いてあるのだ。
ここで渡せれば、とも思うが、悔やんでも仕方がない。
「私は、用がなくても楽しいです」
「そうなのか?」
彼女は続ける。
「昔はずっと一緒に歩いてきたけれど、Pさん、最近はずっと他の方につきっきりでしたから」
咄嗟に俺は、ありがとう、とだけ述べる。
空白の時間が埋まる事を彼女は心中待ち望んでいたということに、俺は不思議な感覚を抱く。
彼女の中に、よもやそこまで心酔するほどの感情はあるまい。
それでも、そう言って微笑む翠の表情に裏はなさそうだ。
これは、信頼されている、とだけ受け取ってもよいのだろうか。
……もとい、それしか方法はないのだけれども。
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