26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/05(木) 00:12:59.50 ID:My2ZDWWTo
「――よし、じゃあ行くか」
「え?」
この時期ともなれば、頬を薙ぐ冷たい風音は周囲を席巻する。
それに負けないように俺が言うと、翠はきょとんとした目をした。
「せっかくの誕生日だからな。今から翠へのプレゼントを買いに行くぞ」
「そ、そんな悪いですよっ」
当たり前というか、ここで拒否するあたり翠らしいというか何と言うか。
これが未央あたりなら快諾するだろうにな、と思うと、何だか面白く感じた俺であった。
「明日は他の子の時間だから、まあ……前夜祭ということで、ほら」
やるなら最後まで。やるならきっちりすべきだ。
この時間を、ただの街歩きの時間にしてしまうのはいささか勿体無さすぎる。
彼女の時間を独占できたのだから、少しぐらい奮発しても文句は言われないはずだ。
そう言って無意識に差し出した俺の手を翠はじっと見つめた。
俺としては、単に開始の合図としてやってしまったというだけの話なのだが、翠にとってはどこか違う物を感じ取ったらしく、少し間を置いて呟いた。
「おうじさま、ですね」
繋がれた手袋越しに伝わる暖かさは、ホットドリンクでない、別の温もりであった。
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