2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2013/12/05(木) 00:03:45.13 ID:orgbAKWn0
柔らかな風がほほを撫でて顔の横を通り過ぎていく。
地面に咲く花の香りと若草の青い匂いが鼻腔の奥で複雑に混ざり合う。
手で遮った暖かな陽射しが顔の上に僅かな影を作りだす。
晴れ渡った空の下、眼前で波打つ緑色の草原をただ、ぼうっと何をするでもなく眺めていた。
どこか遠くで鳴っている鐘の音が風に乗って聞こえてくる。
もうずっと止むことなく響き渡るこの鐘は一体どこにあるのだろうかと、何となく気になって音が来る方へと目を向けると、
その先に純白のワンピースを着た少女が目に留まった。
少女は服と同じ色した無垢の椅子に小ぢんまりと座っている。隣には椅子がもう一つ、そちらは空席のようだ。
どこか儚げなその少女は向こうをむいているので表情は分からないが、凛とした佇まいとは裏腹に少しだけ寂しそうな、そんな印象を覚えた。
もしかしたら彼女は、そこに座る誰かを待っているのだろうか?
ふとそんな疑問が思考を掠めた
頭の両横に乗っかった二つの赤いリボンと、それに結ばれた髪が白いうなじを隠すのを見つめていると、
何故か、彼女が自分のことを呼んでいるようなそんな気がした。
少女に声を掛けようと一歩足を前に出す。
すると、それを制止するかのように背後から誰かが左の手首を掴んだ。
急な感触に驚いて足が止まる。
一体誰が? 確かめようと振り向こうとするが、身体は石のように固まって自由が効かない。
よく見ると風に舞った花びらが宙に浮いたままになっている。
そしてそれだけではない、鐘の音、風で擦れる葉のさざめき、そして自身の呼吸音。気が付けばそれら一切の音が消失していた。
どうやら腕を掴まれたその瞬間、何もかも静止してしまったようだ。
今横に立っている「誰か」を除いて……。
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